愛して欲しいとは言わない
臨也にとって私はただの暇潰しだと思う。彼は人間を愛してると言う。それは一部を抜き、ほぼ全員の人間に当てはまるのだ。私もそのうちの一人。
「やぁ、起きたかい?」
「…おはよう、臨也」
例えばこうして一緒に住んでいようと、どれだけ親密になろうと、…体の関係があろうと、臨也にとって私は"そのうちの一人"なのだ。
「何か食べたいものは?」
「甘いのがいい」
「朝からオススメしないなぁ」
私が臨也と一緒に住んでいるのは、彼が私を気に入ったから。それだけだ。街中(まちなか)で突然攫われ、最初は強制的に始まったこの生活。
「ファミレス行こうか」
「準備めんどくさい…」
「じゃあ出前にする?」
今の私はまさに臨也に養ってもらっている状態。それまでの仕事場も住んでいたマンションもいつの間にか臨也に奪われた。まぁ何不自由なく生活させてもらっているけど…臨也にもし飽きられたら私は路頭に迷うだろう。
「…やっぱ準備する、」
「そう。30分だけ待つよ」
「うん。急ぐ」
いや、生活の心配とかだけじゃない。一番の問題は、私が臨也を好きになってしまったという事なのだ。
私だけを愛して欲しいとは言わない
いつからだろう。臨也に捨てられるのが怖くなってしまったのは。