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 あなたと共に



臨也が待たせていたであろうタクシーに乗る事、数時間。私はあそこにたどり着くのにいくつもの電車やバスを乗り継いだというのに、臨也はまさかずっとタクシーで来たのだろうか。長距離の往復により、メーターが恐ろしい。一体いくらまでいくんだろう。

「慧里、疲れてるだろ?寝ててもいいよ。どうせまだまだかかるから」
「ううん、大丈夫。それより、臨也」
「ん?」
「ありがとう、迎えにきてくれて」

すっかり言い忘れてしまった言葉がようやく言えた。勝手に消えた私を探し続け、怒鳴る事もせず、こうして寄り添って優しく手を握り続けてくれている臨也。私は臨也に何も聞かず、なんてバカな事をしてしまったんだろうか。

「花嫁がいない結婚式は困るだろ?」
「え、」
「一週間後、小さいけど慧里が好きそうな式場予約しといたんだ。あまり目立たないようにしてあるけど、慧里が呼びたい人いたら呼んでいいよ。都合は俺がつけさせるし」
「え、?…や、まっ、」

いきなりの花嫁、や、結婚式、の言葉に私は再び頭を混乱させる。

「ねぇ、まさか嫌だなんて言わないよね」

いつの間に取り出したのか、臨也の手にはキラキラと綺麗に光る指輪があった。

「こんなタクシーの中で悪いけど、また慧里に逃げられたら困るからね。早いとこ渡しとかないと」
「ばかっ、」

せっかくさっきのお別れでは涙をこらえたのに、今度は我慢出来そうにない。

「っ、私で、いいの…?」
「それ聞いちゃうんだ?バカは慧里だと思うよ」

頬に零れる涙を拭こうとする私の手を臨也が取り、箱から取り出した指輪を私の指にそっとはめた。もちろんそこは、左手の薬指。

「俺と、結婚してください」

聞かなくても返事は分かってるけどね、と笑う臨也。

「お願い、します…っ」


もう一度、あなたと共に始めよう


もう二度と、逃げたりしないよ。

    ―――もう二度と、離さないから。