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わたしは今非常にドキドキしている。ほら、あれ、よく言う口から心臓が飛び出しそうみたいな。あの表現の仕方は本当に素晴らしいと思う。まさしくそうだ。


右手に持つシャーペンがプルプルと震える。左手で支えている紙もしわくちゃになりそうなほど強く押さえている。あ、ちょっとくしゃってなった。紙変えようかな。


別にわたしは時代に乗り遅れているわけでもないし携帯もないわけではない。それなりに友達と楽しく高校生活を送っている。


その高校生活の中でわたしはとんでもない人に出会ってしまった。



「あ、そこの。そうそうお前。......だからお前だって。吉原商業ってどこかわかる?」



一目惚れだった。恋愛というものにあまり縁のなかったわたしにとってそれは驚くべきことだった。


キラキラと眩しい天パの銀髪に髪の間から覗く赤い目。学ランを少し着崩しどこかやる気のない人。どこがかっこよかったと言われたらよくわからないけどわたしの中の何かがサイレンを鳴らした。


友達に相談し、自分の中で色々試行錯誤した結果手紙を書くことにした。自分のメアドと名前、「よかったら仲良くしてください」と書く。ほとんどラブレターに近いものだ。



「う、うわああぁあぁあ!!!」



夕方、わたしの叫びをクッションで抑え、再びペンを手に取り紙と向き合う。じっと見つめるが特になんの変化もない。たった数行書くだけでいいのに。


頭を冷やそうと少し肌寒くなったので上着を着て外へと出た。外は既に夕焼けこやけ。歩く道がオレンジ色に輝いていた。


足元を見ながら歩いていく。もし渡したと想定してわたしはその後どうしたらいいのだろう。それじゃあと帰ればいいのか、それともその場で返事を待てばいいのか。きっと顔を真っ赤にさせてカチコチになるに違いない。考えている今でも顔が熱い。


ふと人の気配がしたので顔を上げる。わたしは一瞬でカチコチになった。



「......あ、この前の。」

「あ、あ、あ、あ.......。」



これは偶然なのだろうか、運がいいのだろうか悪いのだろうか。目の前にはあの噂の銀髪の天パの彼がいた。



「この前はどうもー。助かったわァ。」

「い、いや、全然!あれぐらいのことなら!」

「それがよォ、あれあの日に渡さなかったら俺殺されてたわけ!」

「そ、そうなんだ。」



あれ、これは話が続くのかな。ちょっとやばいかも心臓持たないかも。バックンバックン。手紙を書くときよりも心臓は激しく中で暴れる。



「あ、お礼にさジュース奢らせてよ。」

「え!?だ、大丈夫だよ!」

「俺が奢りたいからいーの。あ、俺坂田銀時。」

「あ、え、わ、わたしは姫路野凛華。」



その後わたし達は近くの公園に立ち寄り、自動販売機でジュースを買ってもらった。古びたベンチに二人で座り買ってもらったいちごみるく片手にいじる。


どうしよう、頭の中はそれでいっぱい。まさかこんな夢のようなことになるとは思わなかったから心臓は未だに激しい。本当に口から出そう。


無言の雰囲気を断ち切ったのはジュースを飲み干した彼の方からだった。



「姫路野さんってさ、ここら辺住んでんの?」

「あ、う、うん。ここから歩いて十分掛からないくらいかな。」

「へェ、結構近いんだな。よくここの公園来んの?」

「く、来るよ!学校帰りとか時々だけど!」

「ふーん....。」



そう言って大きな手で彼は口を覆い隠し、目を逸らす。わたしはただ俯いて顔が赤いのがバレないように正常な状態になれるようにそっと小さく深呼吸をしていた。


再び訪れる沈黙。何か話さないとと思ったわたしはポケットから飛び出しているリボンで包装された箱を見つけた。その箱にはお誕生日おめでとうと書いてある。



「き、今日、誕生日なの?」

「お、おう!え、てかなんで...。」

「そ、その箱に書いてあったから。」

「お、おお!なるほどな!そうなんだよ実は俺今日誕生日でさ!」



ハハハッと笑う彼に吊られてわたしも楽しくて笑みを零す。そして彼は再び手で口を覆い隠し、黙り込んだ。頭をポリポリと掻きどこか落ち着かない様子である。



「あ、あのさ!」

「は、はい!!」



突然の大声で肩がびくりと跳ね上がる。体がカチコチと固まる。彼も隣で冷や汗をかきながらわたしのことを見ていた。



「メ、」

「め?」

「メアドを教えてほしいんだけど!」



え、と目を丸くするわたし。そのわたしを見て彼は更に冷や汗を垂らしながらペラペラと仕草をつけながら話す。



「い、いや、あのな!あ、改めてお礼もしてェし!ほら!それに俺誕生日だし!?プレゼントほしいな、みてーな!あれ、俺いきなり失礼なやつだな。いや、違うよ!俺優しいからね!」



アタフタアタフタと頭の中で必死に考え抜いた言い訳を言葉にしていく彼を見てわたしもアタフタしてしまう。



「え、あ、いや!そんなことないよ!わ、わたしでよければ!!」

「え、あ、そうだよな!......え?いいの!?」

「え!?いらないですか!!?」

「あ、いや!ほしいほしい!めちゃほしい!!待って紙紙...。あ、はい!ペンと紙!」

「あ、ありがとう!!」



渡されたペンと紙。右手がぷるぷると震える。左手は紙を握りつぶしてしまいそうな強さと尋常じゃないくらいの手汗。


その試練を乗り越えてわたしは彼にメアドとLINEのID、そして名前を書いて渡した。



「こ、これでよかったですか?」

「お、お、おう!!ありがとう!!」



彼の震えがわたしにも伝わる。渡すわたしも震えているので二人の震えが重なる。それが面白くて思わず笑ってしまう。


そんなわたしを見て彼は笑い、口を開いた。



「ありがとう、すげェ嬉しい。」



その笑顔が眩しくて直視できない。わたしは目を逸らし吃りながら「どういたしまして」と答えた。ジュースを持っていた手により一層力が入る。


その時遠くで男女数名の歓声が響き渡った。







ラブレターの提出日



「銀ちゃんやったアルヨ!!」

「あんなに吃るあいつ初めて見た。オェ。」

「あーあ。旦那がリア充第一号ですかィ。」

「よかったですね銀さん!これこそ最高の誕生日プレゼント、」

「お前らァァァァ!!!何見てんだァァァァ!!!」




銀さんはぴばです((o(*°∀°*)o))
だらけていてもいざという時頼りになる貴方が好きです。
万事屋の中心となって活躍している貴方が好きです。
下ネタ抜群の最高の笑いを届けてくれる貴方が好きです。
これからも、活躍見てます!本当におめでとう!

title : ゼロの感情。様より


 
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