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彼をぼうと見つめるのはわたしの日課となり、ついには自分の中に取り込んでしまい「癖」と化してしまった。


クラスが違うから当然授業も一緒になるわけがなく、廊下ですれ違ったり休憩時間見つけて眺めたりグラウンドで見つけたりする。


最早行動としてはストーカーではないが、視線のストーカーには近いかもしれない。でも心の中では断じてストーカーではないと信じている。


そんなわたしは今日も彼のことを見つめていた。



「(あ、いた...。)」



今から体育らしいのか半袖で外へ出ている。しかし今日はいつもよりも気温が低い。半袖はさすがに寒いだろう。


お、大当たり。体をブルブルと震わせている。そこに蜜色の彼がもっと寒くしてやろうと水をかけようとしている。おー、避けた。あ、なんと反撃するらしい。


楽しそうにしている姿をぼうと眺めていると、先生に次の問題を当てられる。今日は厄日か何かか。



「凛華ちゃーん、この問題は少し難しいよー。」

「答えはAです。」

「......え。」

「あってますよね、答え。」

「すっげー、なんでわかったの。」

「勘です。」

「勘で答えたの、君。」


ブツブツ言う銀八の声をさらりと受け流し、席に座りまた外を眺めた。



「(...いない。)」



彼らの姿は既になかった。















放課後、授業に集中していないなどの理由で銀八の野郎に頼まれごとをされていた。プリントを2枚ずつホッチキスで止める作業だが終盤に差し掛かっていた。



「うーん、ぬ。」



変な声を出しながら背伸びをして、さあプリントを持っていこうと立ち上がった時だった。



ガチャ

「あれ。」



突然国語準備室の扉が開く。わたしは驚いて背伸びしたままの格好で止まってしまった。


そこにいたのは、わたしが見つめているあの彼がいたからだ。



「......先生は?」

「あ、あぁ、なんか糖分足りないとかで自動販売機に行ったまま...。」

「ほー。」



そう言うとドカッとソファに座る。え、座ったし。帰らないの?不思議な思いで彼を見つめているとクツクツ笑い出した。



「あんた、B組の人だろ?」

「え、なんで知ってるの。」

「見つめてること、バレてんだけど。」

「え、あ、うそ!?」

「本当。」



再び彼は笑い出す。わたしは恥ずかしい思いと引かれたらどうしようと思いで頭がいっぱいになってしまった。


まさかの大失態、彼にバレてしまうなんて。わたしは頭を抱えた。



「あんた、面白いよな。」

「...なんかすみません。」

「いや、こっちも楽しんだし?」

「何が楽しんですか?」

「ぼけっとしてる顔を見るのが面白い。」



あぁ、今の一瞬で思った。わたし死にたい。人生最大の恥と屈辱とあと自分の馬鹿さ加減に呆れすぎて灰にならないほど燃えて死んでいきたい。恥ずかしすぎる。


ということはわたしは今まで自分の阿呆面を彼に見せていたことになる。面白がってもらえて嬉しいが本当に恥ずかしすぎる。



「すんません、阿呆面晒して。」

「面白い奴だなとは思えた。」

「顔が?顔がですか...。」

「いや、顔もそうだが、性格が?」



顎に手を当てながら彼は疑問系で話す。首を傾げながら話す姿があまりにも可愛らしすぎて今度はこっちが笑ってしまった。



「あなた、面白い。」

「初めて言われたよ、んなこと。」

「そう?本当に面白いよ。」

「褒め言葉として受け取っとく。どーも。」



クスクスとまだ笑うわたしを彼はぶすっとした顔で見る。その姿もまた可愛らしくて笑いが出てしまう。


すると国語準備室の扉が開く。外から銀八がひょこっと顔を出した。



「あれ、多串くんじゃねェか。」

「土方です、先生。」



はいはい、と適当に返事を返しわたしのところまで来て任せたプリントを驚いた顔で見る。



「あれ、凛華ちゃん全部終わったの?」

「まあ、一応。」

「すげーな、あれだけあったのに。」

「早く帰りたいので。」

「授業に集中しない凛華ちゃんが悪いからな。」

「どうせそれ口実で仕事やらせたんでしょう?」

「......それ、終わったらもう帰っていいぞ。」



あ、話逸らした。まあでもこれ以上話しても拉致あかないし帰ろうかな。


ソファの横に置いた鞄を手に取り「さようなら」と一言言って帰ろうとした。



「凛華。」



銀八とは違う声。わたしは驚いて勢い良く振り向く。



「また明日な。」

「...うん、また明日。」



片腕で顔を覆いわたしはその場を走って立ち去った。


名前、名前呼ばれた。下の名前で呼ばれたよ。あ、でもわたし彼の名前知らない。いや、でも名前...。


うきゃぁぁ、と一人心の中で叫びながら廊下を駆けていった。途中怒鳴られた気もするがそんなの無視。知りません。


あぁ、幸せだ。一応ありがとう銀八。







きみが溢れて溺死



「...で、多串くん用事ってなに。」

「いや、忘れたんでもういいっす。」

「本当は用事なかったんでしょー?凛華ちゃんに会いたかっただけでしょー?」

「......気のせいです!!!」

バタンッッ

「いやー、青春だねェ。」




title : だいすき。様より



あとがき

みうさんに相互記念として捧げます!
てかこんなので大丈夫ですか、これ甘いですか。
なんか文章めちゃくちゃな気が。すみません!
これからもこんな私ですが仲良くしてください(^ω^)
相互ありがとうございました!!


 
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