( 1/1 ) 学校という建物の中で目にするあなたは、きらきらと眩しい髪を靡かせて歩いている。 周りにはいつも人が多く集まっており楽しく仲良く話している。笑った時に時々見える白い歯に見とれてしまう。 長い睫毛に女子負けしてしまうほどの目、太陽の光に反射して綺麗にうつる蜜色の髪、全て全てわたしにはないものだった。 そんな君は友達の友達。つまりわたしとの接点なんかない。つまり顔の認識はあるけど友達でもないし知り合いってほど仲がいいわけでもない。 同じ学校の人、それぐらいの認識しかないだろう。 「ぎ、銀ちゃーん...。」 3年Z組、通称3Z。ここはわたしの唯一の友達である坂田銀時が所属しているクラスだ。 この3Zには滅多に人が近づかない。近づいたら何かしら事件に巻き込まれるかもしれないからだ。実際何人も怪我人(皆軽傷で済んでる)が出ている。 ドアの方で銀ちゃんを呼んでみるも銀ちゃんはいつもの幼馴染みの集まりでわいわいと騒いでいる。 わたしのか細い声は騒ぎの中へと消えていった。 でも次の授業の数学、忘れ物したら怖いんだよな。先生怒鳴り散らすし何よりそんなことで注目浴びたくない。 わたしは後ろからコソコソと教室に入ることにした。その刹那だった。 ドガンッ 「ひぃっ!!?」 突然目の前を横切ったのは机だったもの。今は壁にぶつかりただの塊となってしまった。 わたしは突然のことで腰が抜けてその場に座り込んだ。 「こんのクソゴリラぁぁぁぁああ!!!」 「ぎゃあぁああ!!お妙さ、ぐぼええ!」 ドガァァァアン 本当にここは学校なのだろうかと疑うくらいの破壊音。一体どこから力を出したら壁などを破壊できるのだろう。 ガクガクと震えながら四つん這いで銀ちゃんが騒いでいる場所まで行く。行きたかったのに、腰が抜けている。 「ぎ、銀ちゃーん。」 もう1回呼んでみるものの返事はなし。もういい加減に気づけよ馬鹿! コツン 「あいたっ。」 突然背中を蹴られる。今日はハプニングがありすぎだろと上を向いた時だった。 「あ、すいやせん。」 「え、」 そこにいたのはあの人で。急なことだったのでびっくりしたのでちょっと頭が回らなかったり顔が熱かったり。 それよりもこのクラスだったのか、と新たな情報を仕入れることができて嬉しかったり。 「いいえ、こちらこそ...。」 すみません、そう口にしようとした時だった。 「あれ、凛華じゃん。どうしたの、そんなとこ座って。」 やっと気づいた銀ちゃんがわたしのことを呼ぶ。今更気づくのかよと少し心の中で毒づく。 後ろを振り向くともうあの人はいなかった。残念、もう少しで会話が成立していたのに。 「こ、腰抜けて...。」 「なんで抜けんだよ。」 馬鹿だな、そう言って片腕でわたしを立ち上がらせる銀ちゃんはやっぱり幼い頃とは違っていた。改めて大人になったのだと感じさせられた。 「で、何しに来たの?」 「そ、そう!数学の教科書返して!」 「数学だァ?そんなの借りたっけ?」 「奪われたの間違えだった。とにかく返してよー。次数学なんだって。」 はいはい、と机の中を漁る銀ちゃん。 机を漁っているのを待っている間、さっきの人を探した。 「(あ、いた...。)」 学校の施設の中でしか見ない彼。教室の中で見る彼はいつより新鮮に感じた。 彼は楽しそうに笑いながら黒髪の人を虐めていた。長い睫毛を揺らしながら時々白い歯を覗かせて。 「あった、あった。」 その言葉に我に返る。慌てて銀ちゃんと向き合った。 「ほい、これだろ?」 「あ、ありがと。」 それじゃあ、と一言挨拶をしてわたしはこのクラスを出ていった。最後まであの人を見つめていたけどあの人と目が合うことはなかった。 そうだよね、だって認識すらされてないわたしなんて。 所詮身分の違うわたし達だ。話すのもさっきので最後だろう。もう一度なんて、奇跡が起こればあるかもしれない。 やけに廊下を歩く足音が大きく聞こえた。 王子様と市民A その美しさに憧れた市民Aは ただただ眺めることしかできませんでした。 |