( 1/1 ) 「ひーじかーたーさーんっ。」 縁側をノコノコと歩いている黒い背中に、わたしは思い切り足で蹴りあげた。うご、と呻き声が聞こえたが聞いていないふりをする。 「て、てめェいきなり何すんだァァァ!!」 「いや、その背中見てたらなんかどつきたくなって。」 「俺かりにも上司なんだけど!?上司になんてことしてんだテメー!」 「わたしはあんたを上司とは認めてない!」 「俺はお前を直属の部下と認めたくない!」 「認めろ!現実だ!」 「お前いちいち腹立つな!」 わたしは残念ながら副長の直属の部下、副長補佐姫路野凛華である。 土方さんはわたしの弄り玩具。だからよく総悟と土方抹殺計画を考えては実行して失敗しての繰り返しをしている。 そんな彼にわたしは片思いをしてるとか口が裂けても何が避けようとも、言えない。 「で、今日の仕事は何すればいいんですか?」 「デスクワーク。」 「あ、お腹痛い。女の子の日かも。いててて。」 「大丈夫、寝ながらでもできるように机セットしといてやるよ。」 「どんだけ書類溜まってんだよ。ちゃんと仕事しろよー。」 「大半はお前と総悟の破損物関係の書類だよ!!」 そうだっけ、と惚ければ馬鹿と罵られ手に持っていた書類らしきもので頭を叩かれる。 「ちぇ、仕事面倒くさいな。」 「それ上司の前でいうか普通?」 「何さっきから土方さん自分の事を上司上司上司。そんなに上司アピールしても上司にはなれませんよ。」 「いや、既にお前の上司なんですけど!?」 その時土方さんが持っていた書類にたまたま目が入った。どうやら判子の押し忘れがあるらしい。それを指摘すると怠そうに来た道を戻っていく。 「後にすればいいじゃないですか。」 「今やって後を楽にしてんだよ。」 ったく、と溜息をつき折り返す黒い背中をわたしもちょこちょこ追いかけた。 そしてどうしたらそんなことになるのか血迷ったのか、くいっと土方さんの裾を引っ張っていた。 一瞬驚いて振り向く土方さん。だけどこの行動に驚きたいのはこっちだ。 「......あんだよ。」 「え、あ、その...。」 だらだらと冷や汗が出る。適当な言い訳が思いつかない。いつもなら憎まれ口を叩かれればサッと答えが出て返せたのにこういう時だけ、言葉に詰まる。 「おい。」 「は、はい?」 「唇、なんかついてる。」 「へ?く、ちびる...?」 恥ずかしい、急いで袖で拭こうと腕をあげた時だ。 ぱしっと腕を掴まれ、じっとこちらを見つめられる。まるで鬼の目に捕らえられたような、そんな感じ。 わたしの腕を掴んでいないもう片方の手がわたしの唇へと伸びる。そっと親指で唇をなぞられ、ぞっとする。 そのぞっとする感じにぎゅっと目を固く閉じた時だった。 ちゅっ 「んむっ!?」 突然唇に集まる熱。何かと思え目を開ければ土方さんのドアップ。恥ずかしくなりまた目を閉じる。 熱は冷めることなく段々と熱を上げる。土方さんはわたしの後頭部を持ち角度を変えて何度も何度もお互いを合わせる。わたしはわけがわからずただ必死にしがみついていた。 「ひ、じ...っ。」 「ばーか。」 唇が離れたと思いきやいきなり馬鹿だと罵られる。 いつもの憎まれ口を叩くわたしも酸素を取り込むことで精一杯だった。 「上司なめっからそんなことになんだよ。」 「なっ...!」 カァッと熱が唇から顔全体へと移動していく。わたしは今更自分が何をされたのか理解ができたのだ。 「次はその先行くからな。覚悟しとけよ。」 にやりと口角を上げ、クツクツ笑いながら縁側を歩いていった。 その笑顔はいつもの鬼の形相に大変似合う、ニヒルな笑顔だった。その笑顔さえもかっこいいと思ってしまうわたしはどうやら末期らしい。 ニヒルに笑うの、たまんない 「(あー、ったく。なんであそこであんな顔すっかな。 俺は悪くない。悪いのは俺を煽ったあいつのせいで...。)」 「ひーじかーたさーん。」 「のぅわ!!?な、なんだ総悟か。」 「びっくりでさァ。土方さんも発情期あったんですねィ。」 「......お前まさか。」 title : Largo様より 紅音ちゃんhappybirthday! 誕生日プレゼントがこんなのでごめん! これからも仲良くしてね|ω・) |