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カタカタ


小さな音を立てながら障子をゆっくりと開ける。うまくはまっていないのか障子が少し開けにくい。


しかし真夜中なので足元も手元も暗くて見えない。手や足の感覚で物を感じながら、障子を開けた。


そこにはスースー寝息を立てながら眠る彼の姿を、暗闇に慣れた視界で確認することができた。


その彼にゆっくり足音を立てずに近づく。片手に持っているものを落とさないようしっかり握り締めて、忍び足で。



「......ふぅ。」



なんとか横に来ることまでは成功した。思わず安堵のため息が漏れる。


彼の横には刀がいつでも構えることができるように手に取りやすい場所に置いてあった。それを少し除け、握り締めていたものを彼の枕の横に置く。


そして、布団をめくりゆっくりと中へ侵入すれば...



「......おい、なにやってんだ。凛華。」

「や、やっぱりだめか。」



うっすらと鬼の目が開く。わたしは冷や汗だらだらで笑顔で目を合わせた。


彼はわたしの上司でありここ真撰組の副長である。そんな高い地位の方とわたしはお付き合いをさせてもらっている大変贅沢な者である。


そんなお方は爆睡のところを起こされてとても機嫌が悪そうに見えるのはきっとわたしだけではないはずだ。



「なんで来た、今何時だと思ってやがる。」

「結構遅い時間。普通なら寝なきゃいけない時間。」

「わかってんなら帰れ。」



明日も仕事なんだよ、そう呟いて彼はゴロンと横向きになる。


わたしはそんな彼の忠告など一切聞かず布団の中へと潜り込んだ。



「おい......。」

「怖い夢見た。」



怒ろうと動こうとした彼がピタリと止まる。わたしはそんな彼の広い背中に顔を疼くませてもらった。



「ないって信じてたのに、絶対有り得ないって思ってたのに。夢の中で起こった。」

「......。」

「わかってる、夢だってわかってるけど不安でさ。」

「......。」

「この目でこの手で確認しないと、怖くて、来た。」



よかった生きてる、無意識にその呟きが漏れた。


彼は大きくひとつ溜息をつき、ゴロンとわたしの方へと向き合った。意外に距離がなく少し動揺してしまった。


彼は慰めるわけでもなく優しい言葉をかけるわけでもなく、ただわたしを大好きな鬼の目でじっと見ていた。


じっと見られて少し恥ずかしくなり、合わせていた目線を外す。


すると、彼の唇がわたしの耳元へと移動した。肩を震わせたらそっと、あの低ボイスで囁かれた。



「俺はここにいる。」



びりびりと耳が痺れてわたしの脳波を刺激する。頭がくらくらとして、目がチカチカする。すごい不思議な魔法だ。


安心できる、大好きな魔法。



「......ありがとう。」

「別に、事実をいったまでだ。」



ぐいっと後頭部を掴まれ胸元に引き寄せられる。相変わらずのタバコの臭い。それでも嫌な匂いとは思わなかった。



「おやすみ。」

「おやすみなさい。」



瞳を閉じかけたその時、おでこに小さなリップ音が響いた。







おやすみリップノイズ




「......。」

「すーすー。」

「......あ、そっか昨日来たわこいつ。
あー、よかった襲ったわけじゃねーんだなははは。」

「土方さーん、おはよーごぜ」

がらっ

「「.......。」」

「みんなー!聞いてくれィ!ついに凛華の貞操が!!」

「総悟てめェェ待ちやがれェェェ!!!」




タイトル:ごめんねママより


 
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