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「見て見て!沖田先輩が遊んでる!」



友達に指差されて見たそこには沖田先輩とあれは確か土方先輩、それとゴリラ?が体操服に身を包みふざけていた。


そんな光景でさえ絵になるこの3人は所謂幼馴染みというやつだ。これは友達から得た情報。



「いいなあ。わたしもあと一年早く生まれてたらなー。」



頬杖をついてぶつぶつと語る友達に同情したい気持ちで一杯。そんな気持ちを振り払うようにもう一度外を見た。


今度は女の子も混じっていた。ゴリラは他のところへ行っているらしい。代わりに沖田先輩と土方先輩がキャピキャピ女の子の相手をしていた。



「......。」

「...凛華ー?」

「ん?なに?」

「そろそろ移動しよーよ。」

「うん。」



机の中にある教科書を何冊か机の上に出す。あとは必要な道具やその他もろもろを教科書の上に積んで、完了。友達の方を見るとまだ支度をしていた。


そして再び外に目をやる。彼はまた上っ面だけの笑顔を人に向けていた。



「...つまんなさそーな顔。」

「お待たせー!......?何かあった?」

「んーん、なんでもなーい。行こう。」



わたしは疑問をぶつけてくる友達を押すように教室を出た。















キーンコーンカーンコーン


放課後、学校全体に響くチャイムを聞き部活やどこかへ行くため教室を出ていく。その中急がないといけない友達がわざわざわたしの前まで来て掌を合わせた。



「凛華掃除押し付けて本当にごめんね!」

「大丈夫だから早く行っておいでよ。」

「うん!明日なにか奢るから!」

「じゃあ、アイスね。」

「はーい!」



バタバタと出ていく友達を見送って、さぁやるか、と箒を取り出した。


どうやら彼女は先生に掃除を頼まれていたらしいのだが彼女は彼女で今日どうしても部活を抜け出せなかったらしい。その代わりに、ということだ。


机はそのままで間にありそうな埃を集めていく。埃なんかより消しカスの方が多かった。みんな何気に勉強しているんだなと思った瞬間だった。



ガラッ



突然開く教室の扉。静かだった教室に響いたのでかなり驚いた。


そこにいたのはあの沖田先輩だった。沖田先輩はすぐに扉を閉めてこそこそと隠れる動作をした。まるで忍者だ。



「......あのー、ここ2年の教室ですよ。」

「んなこと知ってらァ。」



あら、せっかく教えてあげたのになんて態度。


彼は部活中だったのか剣道着で何故か息が上がっていた。どうやら誰かから逃げたらしい。大変だな剣道部は。


わたしは放っておいてまた掃除を再開した。



「......なんかの罰かィ?」



話しかけられた。その一言で頭が一杯になった。だけど冷静に冷静に。



「いいえ。友達に押し付けられて。」

「あんたも大変だねィ。」

「お互い様です。」

「そうかィ。」



そう言ってケラケラと笑った。



「......その笑顔嫌いです。」

「は?」

「先輩の、その上っ面だけの笑顔嫌いです。」

「......ふーん。」



前々から思っていた。その上っ面だけの笑顔は吐き気がするほどゾッとする。


ぶすっとした顔をしていたわたしを見て、沖田先輩がクスクスと笑い始めた。



「な、なにが可笑しいんですか。」

「いやあ、あんた面白いねィ。」



再びクスクスと笑うその笑顔は、嫌いじゃなかった。不思議とわたしも笑顔になる。



「その笑顔は、嫌いじゃないです。」

「......ふーん。」



ニヤニヤと胡座を掻いてこっちを見て笑う沖田先輩。何がそんなに面白いのだろう。



「俺お前のその笑顔、好きでさァ。」

「え、」



ボボボボッと顔が熱くなる。頬が痛いくらい真っ赤で熱くて思考があやふやなる。


いま、いま好きって...。いやいや笑顔だけれども去れども。



「姫路野凛華、だろィ?」

「え。なんで、」

「これ。」



そうやってひらひらと教卓から見せたのは席順が書かれてある表だ。そこにはフルネームで名前が書かれている。鞄のある席をわたしのだと思って言ったのだろう。



「俺ァ、」



教卓からわたしの元へと寄ってくる。わたしは箒を抱き抱えたまま固まっていた。


そんなわたしのところへ来た先輩は、わたしの顎を掴み意地悪そうに微笑んだ。



「あんたの笑顔、もっと見たくなった。」



やばい、捕まった。







その笑顔が見たかったんだ



人良さそうなその笑顔じゃなくて、
(誰にでも見せるその笑顔じゃなくて、)

意地悪なその笑顔が見たかったんだ。
(俺のものにしたいその笑顔が見たかったんだ。)




お題:確かに恋だった様


 
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