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やってしまった。


生まれたての姿をしたわたしの頭の中はその言葉で埋め尽くされていた。布団を深く被り冷や汗を垂らしてパニック状態。頭の痛さもあるがそれ以上に心が痛い。


そう、わたしは本当にやってしまったのだ。


「っ〜〜。ってェ。」


わたしの隣にいる切れ目の彼が頭を押さえ起き上がった。先程まで気持ちよく寝ていたのにどうやら頭の痛さで起きたらしい。わたしは再び布団を深く被った。


「......凛華?」


そして数分後、状況が把握できたのか彼は顔を青白くさせた。その顔を見てなんだか申し訳ない気持ちになった。


「な、なんでしょう。」


「...これって、まさかだよな。」


わたしもそうだと信じたい。ただ飲みすぎてお互い馬鹿みたいに騒いで裸になったのだと信じたい。けどそれを裏切るような体の違和感。


やってしまった。ただそれだけ。


「...まさからしいです。」


「...まじかよ。」


そう言って彼は大きな溜め息をついた。彼が吐き出す溜め息に一々傷ついているわたしは一体何なのだろうか。


とりあえずいつまでも裸ではいられてはお互い恥ずかしいし何より風邪を引くので周りに散らばった服を掻き集める。虚しさがわたしを襲った。


「向こう向いててやるから、早く着ろ。」


既に着替え終わった彼はベッドの端に背を向ける体勢で座った。お言葉に甘えてさっさと服を着る。


「...着替えたよ。」


「あ、あぁ。」


「......。」


「......。」


再びの沈黙。あの後だから気まずくて恥ずかしくて何を話していいのかわからないのだ。頭の中にはただ「やってしまった」という後悔しかない。


「...悪ィ。」


「え、」


突然謝られてわたしは戸惑う。正直謝ってほしくなかった。まるでこれが本当の間違いみたいだから。


そして冷酷に彼は一言。


「なかったことにしようや。」


「!」


その言葉が頭の中でエコーする。小さくなるどころか徐々に大きくなり、わたしを狂わす。


「俺ァ凛華のこと、本当に信頼できるいい同期だと思ってっからさ。壊したくねェんだ。」


「同期...?」


「あぁ、信頼できる同期。」


なんだ、結局彼にとってわたしはそんな存在なんだ。涙よりも先に「わかった」という言葉がでたわたしの口は達者だ。


「じゃあ、先に金払って帰るわ。」


「...うん。」


黒い上着を羽織り彼は鞄を手に取る。


「じゃあな...。」


パタンッ


虚しく響く扉の音に空っぽの心が更に空っぽになる感じがした。悲しいはずなのに涙も出ずただ一点をしばらく見つめていた。


そして未だに温もりが残るベッドのシーツを抱き締める。ほんのりと彼の匂いがした。


その温もりを抱き締め再びベッドに寝転がる。服にシワが付こうが気にしない。


ただ昨日の夜の出来事という名の過ちを思い出すように静かに目を閉じた。







ぼくが夜を愛したりゆう







一夜だけでもいい。

君が僕のことを見てくれたのなら

それで、構わない。




お題:依存さまより


 
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