( 1/1 ) 「隊長ーっ。」 「なんでィ。」 「何故こんな寒い中私たちは外にいるのでしょうか。」 「知らね。」 隊長がはあ、と息をつけば闇の世界の一部が白く曇り消えていく。儚く美しい。今の季節でも吐いた息が曇るのだと不思議に思えた。 そんな中ガチガチと震えながら真夜中町を歩いている男女二人、それが私たちだ。 わたしは1番隊平隊員の姫路野凛華。真撰組に入隊してまだ数年しか経っていない新人さんだ。そんなやつが何故自分の隊の隊長様と見回りをしなければならないのか不思議でならない。 本当は遠慮したいとこだがなんあの鬼の副長直々の指令だ。平隊員が断れるわけがない。だからこうして文句をいいながら見回りをしている。 「何故副長は夜中の見回りを任せたのでしょうか。」 「知らね。」 「そもそも隊長、平隊員と見回りって面倒臭くないですか?」 「知らね。」 「......寒いですね。」 「知らね。」 隊長はさっきから話しかけても「知らね」の一言で、ずっと拗ねた顔をしている。きっとガチ寝しているところを起こされたからイライラしてるのだろう。 これ以上話しても隊長をイラつかせるだけだと思い、口を閉じ歩きながら空を見上げた。 空は寒さ関係なく星屑が散らばっておりキラキラと光輝いている。時々浮遊船が空を跨がるのが残念だ。都会は星が見えにくいと聞いたがそんなことはない。都会も都会なりの綺麗な星があった。 「おい。」 「はい?」 突然かかった声の方向を向いた。その数秒後だった。 ゴンッ 「いたっ!」 顔横半分に痛みが襲いかかる。どうやら何かがぶつかったらしい。見てみるとそこには大きな電柱が一本真っ直ぐ立っていた。こんな存在感あるやつをわたしはどうして避けれなかったのだろう。恥ずかしい。 「ったァー。」 痛いところをすりすりと擦る。明日の朝絶対赤くなっている。きっと誰かにいじられるだろうな。 「なにやってんでィ馬鹿。」 「馬鹿は余計ですー。」 「馬鹿だろィ。どうやったらその大っきな電柱にぶつかるんでィ。」 「......前見てなかったら。」 「それが馬鹿っつってんだろィ。」 否定できる言葉を探すが隊長が仰る言葉は全て正しい。反論するのを諦めた。 「ったく、危なっかしい奴。」 そう舌打ち混じりで隊長が言った言葉の後、ふと右手に温もりが伝わった。この優しい温もりはカイロなんかではなく隊長の手の平の体温だった。 「たい、ちょ?」 「危なっかしいんでィ、あんた。」 そのまま握られた手を隊長は自分のポケットに突っ込みまた早歩きで歩き出した。わたしは足を絡みそうになりながらも必死に隊長に着いていく。 「隊長。」 「あ?」 「手、暖かいですね。」 「......あんたは冷てーや。」 きゅ、と握られる右手。わたしは何もできずただやられっぱなしだった。 「なんか、あれですね。」 「なに。」 「ほしたての毛布みたい。」 「......は?」 「だからほされた後の毛布みたいな、そんな優しくて暖かい温もりです。」 「それ褒めてんの?」 「褒めてますよ!わたしその温もり好きですもん!」 天気のいい日にほした布団や毛布は太陽の匂いや暖かさをいっぱい浴びている。布団の方もいいが身体全体を包み込んでくれる毛布の方が好き。まるで太陽の優しい温もりに包まれてる感じがして。 「......変なやつ。」 「よく言われます。」 「ま、有り難く受け取りまさァ。」 そして今日1番最後の時間帯、隊長は夜だというのに太陽みたいな眩しい笑顔をわたしに向ける。 たまにはこんな指令も悪くないと思った。 あなたは毛布 「うぅー。やっぱり手繋いでても寒いですね。」 「じゃあ抱き締めてやろうかィ?」 「ええ!ぜひお願い......、え?」 「仕方ない我が儘隊員でさァ。」 「い、いやごめんなさい間違えました!だから構えないでください!」 「なんで手握るのはいいのに抱き締めるのはダメなんでィ。」 「......それもそうですね。」 「ということでいただきまーす。」 「わ、と、ちょっ!?」 「あったけー。」 お題:魔女様より |