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ゆらゆら、ゆらり。


わたしの体は右に左にと揺れる。リズムよく揺れ、耳からは甘い甘い声で歌う大好きな歌手の曲が流れている。心地よさ抜群の瞬間、睡魔がわたしを襲う。


寝ないよう寝ないよう必死に足を踏ん張っては瞼が降りる。それが合図かのようにまた足をギリギリと踏む。い、痛い。


わたしが住んでいる町は山に囲まれた緑豊かの田舎だ。あちこち見渡せば田んぼ案山子田んぼ案山子時々水田。コンビニなんてものはバスで約30分の場所にある。


そんな田舎から離れた場所にある学校。わたしはそこに仕方なく入学した。勿論家から通える場所にある唯一の学校だからだ。そして毎朝バスに揺られながら来るのだが、残念なことに席が空いていない。


お年寄りの朝は早いというのは本当らしくまだ7時半なのにも関わらず小さいバスの席は全て埋まっていて若者のわたしは残念ながら棒を掴み立つはめに。


こんな毎朝が辛いとは思わなかった。


「......っは!」


しまった、また立ったままうたた寝をしてた!白目とかじゃなかったよね!?


誰かに見られていないかとキョロキョロ見渡す。


するとひとつの席に座っている若者と目が合う。


彼は学ランを着ていた。学ランといえばこの辺りだと銀魂高校だろうか。それにしても綺麗な顔だ。


ガン見をせず、しかし観察をしていたわたしはまた彼と目が合う。彼は軽く会釈をした、慌てて自分もする。するとクッと笑い手に持っていた本に目を戻した。


「......なに読んでるんですか?」


田舎者の習性、あまり人見知りしない。興味があったら聞いてみる話しかけてみる。これがわたしだ。


片耳からイヤホンを外し彼に近づいて上から話しかけると、瞳孔が開いた鋭いだがどこか優しい目がわたしを映す。じっと見てきたのでじっと見返していた。


「......本。」


「いや、見ればわかりますよ。わたしそこまで目腐ってません。」


彼はまたクッと笑い「暇だから読んでただけだ。」と話を終わらせわたしに目を向けた。


「お前、いつもこのバスに乗ってるよな。」


「え、なんで知ってるんですか?てか知り合い?」


「違ェ。いつも必死に棒掴んで寝ないよう頑張ってる姿見てたら印象残る。」


「え、嘘!?見られてた!?」


恥ずかしいこのうえなく恥ずかしい。きっとわたしの顔は今マグマよりも熱いやばい顔から湯気が口から炎が出る。


「毎朝頑張ってんな。」


「......う、うん。一応。」


「初めて見た。あんなにあからさま眠たそうにしてる奴。」


「うわー、本当に恥ずかしいよ。」


「ずっと白目よりマシじゃねーか。」


「確かに......、って白目見たことあるの?」


「一瞬だけ。」


「あー、やばい吹っ飛びたい恥ずかしい。」


それは印象残るわ。花の女子高生がバスで必死に手すり掴んで白目になって。花の女子高生じゃなくて白目の女子高生になっちゃったよオイ。


「仕方ねーな。」


そう言って大きな手がわたしの肩を掴む。そしてそのまま彼が立ち上がり無理矢理座らされた。つまり席を譲られた。


「ご褒美。」


「え『次はァー、銀魂高校前ェ銀魂高校前ェ。』」


わたしの驚きの声はバスのアナウンスと重なる。そして数秒後に止まるバス。彼は出口へと向かっていった。


「じゃーな、白目さん。」


ニヤリ、そう笑って外の世界へと消えていった。


右の耳からは隣に座っているおじさんのいびき、左の耳からは私の大好きな歌手が歌う甘いラブソング、そして肩には彼に掴まれて熱くなった一部。


次第に顔も徐々に真っ赤になっていった。







甘いラブソング







「土方さーんおはよーごぜ、」

「......なんだよ。その顔。」

「土方さんいつも以上にニヤニヤしてて気持ち悪ィでさ。おぅえ。」

「勝手に吐いとけ馬ー鹿。」



 
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