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「よこせよ。」


そう言って右手を差し出してくる、ここ夜兎高校の番長神威。


彼は大の喧嘩好きで右に出る者というより周りに出る者はいないと言わせるほど強い。またチャームポイントかなにか知らないがいつもニコニコと笑っている。噂では殺しの作法のひとつだとか。


こんな恐ろしい人とわたしの関係は「友達」というやつだ。あることがきっかけで話すようになり今ではもう随分仲良しかな?まあ周りとは少し違う友達で必要なときに呼ぶ、所謂暇潰しみたいなものだった。


そんなわたしの暇潰しは朝、校門の前に立ち冒頭に戻る。いきなりのことすぎて顔をしかめた。


「言っている意味がわからない。かつあげならわたし以外にしてよ。」


「俺はお前が意味わからないよ。」


そう言ってため息をつかれる。


「ていうか話の内容に主語がないから何をよこせなのかわかんないわアホ。」


「なにって、ナニだろ馬鹿。」


「理解不能だボケ。」


ったく、と言ってまた溜め息。いい加減学校の敷地内に入りたいんだけど授業受けたいんだけど。


こう見えてもわたし真面目な人で授業はちゃんと出るし提出物も期限までには必ず出す。勿論テストも文句なしだ。


「もー、いい加減にしろよー。入れろよハゲ。」


「......殺すぞ。」


「あれ?いつもみたいな「殺しちゃうぞ☆」じゃないんだ「凛華。」......がちキレだねごめんなさい。」


とりあえず頭を下げそして神威の横を通りすぎようとした。しかしそれは許される行為ではなかったらしい。腕を思い切り掴まれた。


「だからよこせよ。」


「だからなにを?」


「......ナニを。」


「もう、いい加減にしてよ。」


さっきから同じ会話が繰り返される。その度にイライライライラ。


それが顔に出ていたのか相変わらずの笑顔で「ヒント」といい再び口を開く。


「凛華さ、今日なんの日か知ってる?」


「今日?聖者バレンタインが殉教された日。」


「お前無駄に頭いいよね。」


「どうもありがとう。」


そりゃ、貴方達より勉強していますから。


「じゃあ一般的に考えて。今日は女の子が男の子になにする日?」


「ナニする日。」


「殺しちゃうぞ。」


「☆マークつけないと。」


「.......だから、凛華あのね、」


「あ、神威、もしかして」


チョコ欲しいの?


そう言ったらいつものニコニコ笑顔じゃなくて滅多に見れない瞳が開く。え、本当に欲しいの?


「せっかく他の女のチョコ全部断ってきたのに、意味ないね。」


はあーあ、再び大きな溜め息。


「断ったの?みんな?」


「うん、俺彼女からしか受け取らないって言った。」


「......は?」


この話の流れはおかしい。つまり神威は他の女の子に彼女がいるから彼女のしかいらないんだあははみたいな感じで断ったという。


「いつの間に彼女できたの?」


「......凛華は鈍感だねー。」


またまた溜め息。わたし今日何回溜め息つかれたよ。


するとわたしの冷たい手をとり、再び笑顔になった。その笑顔はいつもの笑顔じゃなくてどこか違った感じだった。


「ねえ、俺にチョコちょうだい、彼女。」


「......え、わたし神威の彼女じゃ、」


「もう言い触らしたから今更撤回できないよ。」


「そ、そんな......。」


ニコリと笑うその顔はいつもよりも何倍も意地悪な顔をしていました。今度はこっちが溜め息。


姫路野凛華、今日から強制的に神威の友達から彼女に昇格しちゃいました。







思春期メランコリー







「......神威さ、わたしのこと好きなの?」

「好きがよくわかないけど凛華見る度にムラムラする。」

「て、貞操危うし!!!」

「あとぎゅぅってしたくなる。離したくない側にいたい監禁したい。」

「最後の言葉は聞かなかったことに。......まあとりあえずチョコどうぞ。」

「ありがとう。あれ?意外にしっかりしたチョ「これ以上喋るなアホ。」」




――――――あとがき――――――

実は神威に手作りチョコ用意してました。
けど最後まで渡すのを焦らしたヒロインでした。



お題:瑠璃様



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