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一年最後の日を日本では大晦日と呼んでいる。


その日は大体朝から夜年を越すまでのんびりと過ごしている人や、大晦日こそ大儲けだ!と考えせかせかと働く人やはたまた働かせれている人や様々な過ごし方がある。


わたしが考える大晦日というのはもちろん前者。朝からのーんびりこたつに入ってぬくぬく過ごす、それが当たり前だった。


「いらっしゃいませー。」


当たり前だった、のに。


物を通す度にまぬけな音を出す機械に必死に前屈みになりながら物を通す。


「1569円のお買い上げでございまーす。」


はい、わたしただいまバイト中です。


どうしてこうなったかと言うと、


「凛華ちゃーん、悪ィんだけど大晦日だけでてくんね?人足りなくってさァ。」


とスーパー「銀ちゃん」の坂田店長が頼み込んできた。


わたしは無理矢理バイト代上乗せを約束させ、それを承諾した。わたしの大晦日を潰した罰だ。


以上の理由でわたしは仕方なくバイトをしている。数時間立ち続けていたせいで腰と足が痛い。


それでも笑顔を忘れないわたしを誰か褒めて下さい!


「ありがとうございましたー。」


ちらっと時計を確認。上がりまであと3時間もある。


気が遠く感じた。





ーーーーーーーーーー......





「お先に失礼しまーす。」


「おー、凛華ちゃんお疲れェ。」


大きな段ボールを抱え込んでいる坂田店長が言う。


「お疲れ様です、ぷぷ。」


「なにコイツ殴ってもいい?殴ってもいいよね?」


「わわ!冗談ですってば!」


わたしに向かって投げようとした段ボールを置き、その手を肩に乗っけた。


「なぁなぁ。」


「はい?」


「30分前からずーっと店の外で待ってる奴がいんだけど、あれ知り合い?」


坂田店長のその言葉に目を大きくする。


「30分も!?」


「あぁ、寒ィーのにずっと。」


「や、やば!」


肩に乗っかっていた手を払い除け、わたしは出口まで猛ダッシュした。


「......ちぇ、狙ってたのに。」


頭をぼりぼりと掻いていると、坂田店長ーと呼ばれる声が聞こえたのでその場を後にした。


そんな坂田店長の気も知らないでがむしゃらに出口へ走る。


ありがとうございましたー、という店員の声を押し退け壁に寄りかかっている人物を見る。


「今日は8時までだって言ったじゃん総悟!」


呼び掛けるとマフラーに顔をうずくませ鼻を赤くした彼氏、沖田総悟がいた。


「......んなこたーわかってらァ。」


「わかってたのに外で待ってたの!?寒いから中入っとけばよかったのに。」


「いいだろィ別に。」


「......もう!」


迎えに来てくれただけでも感謝するかな。


季節は過ぎたけれど真っ赤なお鼻のトナカイさんの手を握る。


「ありがとうね!」


「......。」


きゅっと握り返されたのは返事かそれとも一種の愛情表現か。どちらとも可愛いこと他ない。


そして、そのまま総悟のポケットに手を突っ込み歩き出す。


「あーあ、今日も疲れたわ。」


「大晦日だから多かったろィ。」


「うん、たーくさん買い物してたよ。」


こーんぐらい、と片手で表現してみると苦笑いでなんじゃそりゃと返された。本当のことなのに。


「あとね、子供とか孫とかのためにかな?お菓子もたくさん買ってたよ。」


「......ふーん。」


「可愛かったなァ!小さくてぷくぷくしてて目がクリクリしてて!ああぁ!思い出した今でも可愛すぎて胸がしめつけられる!」


「こども、好きかィ?」


「うん!大好き!」


「......なら、」


近づくベビーフェイス。気づいた時にはわたしの唇と総悟の唇が綺麗に重なっていた。


突然すぎて目が開いたまま固まる。


「来年は子作りに専念しやしょーか。」


「......ふぇ?」







来年の抱負は、







「子供、好きなんだろィ?」

「す、すすす好きだけれども!」

「けれども?」

「子作りに励むとか、そんな、あの。」

「大丈夫でィ、凛華。」

「?」

「責任は絶対とる。」

「え、あ、はい。」

「ま、責任あってもなくても逃がしやしやせん。」

「!!!」



 
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