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ぽつぽつと降る雨をわざと顔全体に当てるように空を見上げる。頬についた生暖かい血が流れていく気がして気持ちがいい。


その雨によって流れた血は真っ赤な地面の上に落ちていく。ピチョンと音を立てて跳ねるそれから目を反らす。


「......誰も、いない?」


いい加減空を見るのも飽きたので周りを見渡すと赤々としている。しかしこれももう見慣れた、驚くことではない。


「......。」


耳をすますと聞こえる群衆の音。どうやらまた来たらしい。手に持っていた刀を再び握りしめる。


「うおああああぁぁあ!!!」


そのざっと見た感じ数百いる群衆の中へわたしは一人で突っ込んでいった。


ご時世壤夷戦争真っ只中。わたしみたいな女でも戦争する一人に加わるぐらい規模が広がっている。


わたしにもかつて仲間がいた。もう肉片となってしまったが。


こんな言い方をしたら情が無いように思われるがここで弱音を吐いたら、全部吐きまくり最後には崩れてしまいそうだから言わない。


本当は叫びたい、泣きたい。けどそんな弱音を吐いている暇があるんなら、


「あああぁぁあぁ!!!」


仲間のためだと思い、この刀を振り続ける。これしかできないのだ。


こんなこと考えている暇もそろそろ無くなったらしい。


さすがに一人対数百の敵はキツかったらしい。気づいたらあちこち体に傷がついていた。そしてお腹には致命傷の傷。立っているのもやっとというくらい。


「......はぁ、はぁ、っ?」


目の前が霞む、と刹那不気味な顔をした天人野郎共が襲いかかってくる。


あぁ、わたしの人生これまでか。


なんて冷静なことは考えられなかった。ただひたすら致命傷のお腹を押さえながら刀を振る。


「わたしは、こんなところで、死ね、ない......っ!!!」


こんなとこで絶対死んでやるか。しわくちゃのババアになるまで体の言うことが聞かなくなるぐらい生きて、天国にいるあいつらに自慢してやるんだ。


わたし、こんなに生きたよって。


だから、だから......っ!!!


そんな願いも虚しく金棒がわたしを殴り殺そうと迫ってくる。本能的にもうだめだと思った。


「女のくせにやるじゃねーか。」


ガキンと大きな音が鳴り響く。瞳を開くとキラキラと輝く髪を持った男が背中を向けて立っていた。


「えっ......。」


こいつ、もしかしてあの噂の白夜叉?噂通りの真っ白さだ。


「お前いい根性してんな。」


「ど、どうも......っぐ!」


押さえていたお腹から大量の生暖かい血が溢れ出てくる。そしてお腹だけに留まらず口からも血を吹いてしまった。


「ゴホッ!」


「!!お前ェすげー怪我じゃねェか!」


「だ、大丈、夫。」


「嘘つけ!その怪我なら立つのもやっとなはずだ!」


ガキン バキッ


見知らぬふたり背中を合わせながら次々と天人を斬り捨てていく。


「絶対、絶対こんなとこで、死んでや、るか。」


「お、おい!しっかりしろ!」


その言葉が耳に入ったのが最後だった。


 
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