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鬼の副長、俺は周りからそう呼ばれている。呼ばれることに別に嫌な気はしない。ただ俺は俺のやり方で真撰組をまとめているだけ。それがただ他の奴等にとっては厳しいだけ。ただそれだけのことだ。


鬼の副長と呼ばれる俺は勿論自分にも鬼だ。今も眠たいがこれを終わらせないと近藤さんに迷惑をかけてしまう。(ほとんど総悟の謝礼文とか始末書のチェックとか)


閉じる瞼を必死にこじ開けながら筆をとり書いていく。


コンコンッ


「土方さん、起きていらっしゃいますか?」


障子のほんの少しの隙間からか細い声が聞こえる。あいつだ。


「いるぞ。なんか用か?」


「いえ、今晩は冷え込んでいるのでお茶をと思いまして。」


そう言い背後で障子が更に開く音がする。ああ、お茶か。と呑気に考えていた。書くのをやめて背後にいるやつの方向を向いた。


そこにはニコリと笑顔を浮かべてお茶を乗せたお盆を置いていた。


彼女は姫路野凛華という。ここの女中だ。もう入って4年目になるベテランというやつらしい。


彼女は本当に気が効く人で背中の痒いところをいつの間にか掻いてくれているような(例えがわかんねーだと?気にすんな)そんな気配りができる。


そんな彼女だから俺は惚れた。


「土方さん?」


「あ、あぁ悪ィ。茶もらう。」


「はい、どうぞ。」


お盆に乗せられたお茶を有難く受け取り、口の中に入れる。ちょうどいい温度だったので下も火傷せずに済んだ。ここまで気配りができるとは。


「それでは、わたしはこれで。」


そう言い残し出て行こうとした、彼女の腕を掴んだ。


「土方さん......?」


「もう少しいろよ。」


自分でもなぜこんなことを言ったのかわからない。けどこの温もりをもう少し感じていたかった。


「え、でも仕事の邪魔じゃ、」


「たまには休憩ってモンも必要だろ。」


彼女は俺をじっと眺め、はい、と短く返事をし俺の隣に座った。今なら心臓爆発で死にそう。いや、総悟の思い通りになるから我慢しよう。


そんなことをもやもやと考えていた時だった。


「うっ...。」


隣の彼女が呻き始めた。心配になり顔を覗く。頬から一筋の何かが流れていた。


「え、おま、なんで。」


「土方さんが...。」


え、俺のせいなのか俺のせいなのか!?記憶にねーけど酷いことしたのか俺!?


「わ、わり「土方さんが!」」


涙目でキッと俺を睨み叫ぶ。いつもの笑顔の彼女はいなかった。


「土方さんが、優しくするから、」


「...優しいのか?」


「優しいです!」


更にキッと睨む。この顔を可愛いと思うのは惚れたなんたらってやつか。


「優しくするしさっきもここにいてとか言うし!」


「いや、それは...。」


もう少しここにいてほしかったから本当のことを言ったまでで。


「...土方さん。」


「あ?」


俺の寝巻きの裾をギュッと掴み涙でいっぱいになった目で俺を見上げる。


「鈍感。」


「は?」


「鋼鉄鬼悪魔期待させ屋鈍感馬鹿。」


「ちょ、待て!!馬鹿は関係ねーだろ!!」


「......。」


ぶっすーと口を尖らせて、こう言った。


「期待、しちゃいますよ?」







泣き虫ハニィ







誰よりも可愛くて何よりも愛しいそいつを俺は瞬間、俺の中に引き込んだ。

んで、耳元でそっと呟いてやったよ。

「俺も、期待していいか?」




お題:無気力少年。様より


 
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