人の言葉とは意外なもので。


口は災いの元とよく言う。あれは本当にあっていると思う。


言葉というのは人を傷つけ、壊すことができる。一生消えない傷を残すこともできる。


けどそれと同時に逆のことも言える。人の言葉はどんなに遠く離れていようが、暖かいことがある。


冷たく冷え切った心さえも温めて、溶かすことができる。


言葉というのは人間だけが与えられた素晴らしいもの。


それを毎日使っている私たち人間は本当に幸せ者だ。


そんなことを強く思った時のお話である。










――――――――――――………










「銀ちゃ−ん。」


こんにちわ、私姫路野凛華といいます。ここ万事屋銀ちゃんに神楽と一緒に居候させてもらっているものです。


「んだー?凛華。」


だるそうに椅子から声をあげる銀ちゃん。一応オーナーです。


「銀ちゃん、依頼者様だよ。」


「ああ、仕事か。」


だるそうに立ち上がり、だるそうに接客をする銀ちゃん。本当にとにかくだるそう、としか言いようがない。


「じゃあ、凛華。」


「うん。」


短い返事をし私はその場から離れる。


いつもいつもこんな感じ。


仕事の依頼の立ち合いは絶対に許されない。時々猫探しとかそんなのかある時は手伝わされるから、途中で呼ばれたりする。


しかし、


……グスッ。


「!」


襖の向こうから泣き声が聞こえた。


そう、危険だと判断された仕事などは絶対私は突き合わせてもらえない。


理由は私が無力だからだろう。


私は特別すごい能力を持っているわけでもないし、ましてや運動神経がいいわけでもない。


要するに戦いの中だったら邪魔者。


そのことがよくわかるから、だから自分からも行かせて、とは言わない絶対に。


銀ちゃん達の邪魔になるぐらいならこうして家でおとなしくしているよ。


ガタガタッ


仕事の依頼の話が終わった後は銀ちゃん、神楽、新八は仕事主と万事屋を出ていく。


私はそれを確認して客間に入り食器などを片付けていく。毎日毎日こんな感じだ。


正直悲しいが、仕方がない。


自分が弱いのが、足手まといなのがいけないのだ。










――――――――――――………











その日は深夜夜遅くまで帰ってこなかった。


私は寝ずにずっとソファに座ったまま三人の帰りを待ち続けていた。


ガラッ


「ただいまァ。」


「帰ったアルー。」


ふたりが帰ってきた。ということは新八は自分の家に帰ったのだろうか?


とりあえず二人を迎える。


「お、お帰り。」


ふたりは朝よりも傷ついていた。あちこちから痛々しい傷の痕が見える。


私はとても悲しくなった。


銀ちゃん達が死に物狂いで戦っているときに私はなにもできない、無力だ。


「え、凛華まだ起きてたのか?」


目を開きこちらを見る銀ちゃん。


「う、うん。二人を待つのが私の仕事だから…。」


眠い目を必死に擦り開けさせる。こんなところで眠たいなんて言わない。


「凛華――――ッッ!!」


ドガッ


神楽がものすごいスピードで私に抱きついて?ぶつかってきた。


「クククッ。俺の言ったとおりだな。」


「本当ネ!!天パの言うとおりネ!!」


「天パ馬鹿にすんじゃねェェェェ!!」


「?あの、どういう?」


ああ、と銀ちゃんは神楽を攻撃するのをやめてこちらを向いた。


「凛華の言葉って救われるよな、つー話。」


「え?」


救われる……?私の言葉が、銀ちゃん達を?


「今頃になって気づいたけどよォ、凛華の『お帰り』って言葉あんじゃん?あれ、暖かいんだわ。」


「そうヨ!ちゃんと聞いてみればすごく嬉しいネ!!」


「俺達はさ、きっと凛華の『お帰り』つー言葉を聞くためにこうして、万事屋に帰って来てんのかもな。」


「わ、私、みんなの役に立ってたの?」


「ああ、寧ろ凛華が迎えてくれねー日常があり得なくなっちまった。」


銀ちゃんがふにゃりと気力なく笑ったその瞬間、


うぅうわあぁあああぁぁ!!」


私は声を上げて大泣きをした。


「え!?凛華どうしたネ!?」


「・・・・・・ソッとしといてやれ。」


こんな私でも、万事屋で雑用しかしていないこんな私でも銀ちゃん達の役に立っていた。そのことが嬉しくて嬉しくて。


今まで溜まっていたものが全て涙として流れていった。


「うぅ、グシュッ。」


「結構泣いたな、お前。」


「女の涙は最強アルよ。」


「わけわかんねーよ。」


しばらくして私は泣き止み、みんなが帰る理由になっていると言う言葉を言う。


「ふふ、みんな、







お帰りなさい!!







この時初めて言葉の大切さ、素晴らしさを教えてもらった気がする。

「お帰り。」

銀ちゃん達は今日もこの言葉を聞くために数々の依頼を熟していくのだった。

今からの漫画の中でも、アニメの中でも、ね!



 
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