鈴の音が静かに響く今晩。冷え込み具合も半端なく身を縮こませながら夜の街を巡回する。


そんな中また静かにリン、と音がする。その方向を見ると俺の隣にいるこいつ、姫路野凛華がいた。


「...隊長どうかしました?」


「別に、なんでもねー。」


鈴の音の正体はどうやら彼女の頭についている簪らしい。鈴がついている簪なんて今時珍しいものがあるものだ。


「あ、隊長!見てください!」


「あ?」


リン、とまた音を立てながら俺の袖を掴む。彼女は上を見るように指を指していた。怠く重い頭を上げる。


「......綺麗。」


そこには満天の星空の世界が広がっていた。闇の中必死に光っているそれは美しく泡沫のあるものだと感じた。


その時、


「あ!たたた隊長!」


「...流れ星、ってやつかィ?」


「そうです流れ星ですよ!」


なんともロマンチックなことに流れ星が満天の星空を横切る。一瞬しかでないこれこそ儚い星だ。俺はぼーっと眺めていた。


「はっ!お願い事するの忘れた!」


「まだそんな子供じみたことしてんのかィ。」


「子供じみてないですー!」


大体お星さまに願ったことでそれが叶ったとかそんなこと全然ないのにこいつみたいな子供じみた奴等は皆、星に願い事をする。


「凛華、もう帰りやしょう。」


「......。」


彼女は手を合わせ目を閉じその場に立ち止まっていた。その姿があまりにも小さくて華奢で可愛くて。


思わず近寄って抱き締めた。


「たい、ちょう...?」


目を開け鼻を真っ赤にした彼女は俺の方向を見た。なんだか恥ずかしくて顔を見せられなかったので凛華の肩に顔を埋める。


「わたしね、お願い事したんです。」


「もう流れ星が消えちまったのにかィ?」


「流れ星以外の星にお願い事しました。」


凛華の首に回していた腕に掴まれる感触。暖かかった。


「きっとわたしはこれからもお願いし続けます。」


「......なにを?」


「なんでしょうね。わたしもよくわかりません。」


ふふっと笑う声が聞こえる。俺も可笑しくなり笑い出した。


「でも、今度はちゃんと流れ星にお願いしたいです。」


「ならかき集めてくればいいじゃねーか。」


「わたしひとりは寂しいです。」


リン、また簪の鈴が綺麗な音を出した。いつの間にか彼女はこちらに向き合っていた。


「一緒に、来てくれますか?」


満天の星空と彼女の愛らしい顔、どちらも美しく儚く消えそうで逃がさないように抱き締めた。







流れ星をかき集めて







そして、かき集めた流れ星に願おう。

この先何十年、何百年先も俺の隣にお前がいる幸せを。



 
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