小さい頃から見てきたそれは、ただ光輝いて綺麗で憧れだった。


幼少時代、俺は市民に慕われる父様の姿をいつも隣から見上げていた。


市民に手をふる父様の頭にはいつも光輝く王冠があった。それは幼い俺にとって大変興味のあるものでいつも羨ましそうに眺めていた。


父様は俺がそれを見つめる度に言う。


「お前も大きくなったら手に入ることができるよ。」


その時期言ったことが実現しなかったことがなく欲しいものは全て手に入っていた。けど、家来に幾ら命令しても「それだけは勘弁してください」と断られる毎日だった。


少し大人になり、俺は妃を選ばなければなくなった。勿論後継ぎの子供を生むためだ。


しかし俺はそんなことはどうでもよかった。結婚さえすれば長年欲しかったあれが手に入る。そのことで頭がいっぱいだった。


次期王子の妃候補パーティーが開かれ、派手な衣装を身に纏い本心見え見えの態度で接してきた。


贅沢な暮らしをしたい......。


痛いほど気持ちが伝わってきた。鬱陶しいので適当に凪ぎ払う。しかし女は粘り強く俺に迫ってきた。


いい加減うんざりし辺りを見回した時だった。


「ーーーーーっ。」


そこにいたのは女に囲まれた俺を見ようともせず、ただずっと窓の外を眺めるこれは大層美しい娘がいた。あまりの美しさに息を呑んでしまった。


俺は女を掻き分けそいつに近づく。


「......おい。」


「!」


肩をびくりと震わせこちらに振り向く。こっちを真っ直ぐ怯えた目で見る姿にまた息を呑む。


「名は、なんて言うんでィ。」


「......姫路野、凛華と申します。」


ドレスの裾を持ち上げお辞儀する。その行動ひとつひとつが他の女に欠けている華麗さを物語っていた。美しい、この一言では現せないような人だった。


「姫路野凛華、かィ。」


「呼んでいただき誠に光栄でございます。」


再び挨拶をし、目が交差する。心臓がひどく鳴り響いていた。


「ぁーーーーっ。」


なにかを言いかけようとしたその時、ちょうど俺の目線の先に見えた幼い頃から欲しがっていたあれを被る父様。


俺は姫路野凛華とそれを交互に見る。どちらも光輝いていて美しい。


しかし、どうしてだろう。


「凛華。」


「はい......っ!」


華奢な体を引き寄せ抱き締める。周りからは悲鳴に近い声が響きわたった。


凛華はおどおどしながら俺の胸の中で暴れる。顔が赤くなったり青くなったりと表情もコロコロ変わる。


「そ、総悟、様?」


「凛華。」


体を優しく引き離し目を合わせる。凛華は緊張しているのかまた恥ずかしいのか目があちこちキョロキョロと動く。


「あんな王冠より、お前が欲しくなりやした。俺の妃になれ。」







星屑の王冠







ボロボロと泣き出しながら返事するお前とあの王冠なんて比べるなんてできない。

お前のその顔を見ると、幼い頃からずっと欲しかったあれが星屑で作られたガラクタに見えてきた。



 
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