『見て、ベルメールさん!!』
『みかんいっぱい取れたよ』
暖かい昼下がり
みかんの収穫作業をしているとき、ナミはふと昔のことを思い出した
『本当 カゴいっぱいね』
ベルメールはタバコを加えて、太陽のように笑う
『カゴに入りきらなかったんだよ』
『だから手でも持とうとしたの』
そう言って、手をベルメールに向かって差し出す、幼い日のノジコとナミ
『でも2つずつしか持てないの』
『もっと持てたら、1回でいっぱい運べるのにね』
ノジコとナミは唇を尖らせながら、顔を見合わせる
それを見たベルメールは「ははっ」と声を上げて笑った
『別に1回でいっぱい採ろうだなんて思わなくていいんだよ』
そう言って、2人の頭に手を乗せる
『2個ずつだから、「ににんが『4』」ね』
『「ににんがし」!? 何それ』
ノジコがベルメールの言葉を片言で繰り返す
『みかんの数だよ 2人で2個ずつ 2×2だから「ににんが『4』」』
『「ににんがし」・・・ 何か面白いね』
ナミは目を輝かせる
幼い2人には、何かの呪文のように聞こえたのかもしれない
するとベルメールは何かをひらめいたように「おっ?」と言った
『ナミの髪はきれいなオレンジ色だね』
『うん!! みかんと同じ色〜』
『短いから後姿なんか、蜜柑に見えるんじゃない?』
『大きいみかん!?』
ノジコがナミの後ろに回りこみ、まじまじと見つめる
『本当だ・・・大きいみかんみたい』
ノジコの真剣じみた声に、ベルメールはまた声を上げて笑う
『じゃあ、ナミも入れて「ににんが『5』」だね』
「「ににんが『5』」か・・・」
ナミは手に持った蜜柑を見つめながら、小さく繰り返す
今は髪が伸びてしまったから、後ろ姿は蜜柑に見えないだろうな
ナミは懐かしそうに目を細めた
「さてと・・・」
そろそろ蜜柑泥棒たちが、今日の収穫を盗みにくる時間だろう
カゴを担ぎなおして、小さな蜜柑畑を振り返る
蜜柑畑の中心からは
あの日の3人の笑い声が聞こえる気がした
ににんが『5』
(ベルメールさん)
(私の船の船長は)
(一度に蜜柑を10個口の中に入れて運んじゃうツワモノだよ)
* * * * * * * * * *
ルフィなら、10個くらい余裕ですよね?笑