恋って、何て面倒くさい。
好きな人には、たくさん話しかけたいし、触れたいし、構ってもらいたい。
でも、それが容易くできるポジションというのも、いささか不便なのである。
「ねぇ〜 ゾロー?」
ナミは刀の手入れをしているゾロの名を呼ぶ。
「あぁ?」とイカつい顔をこちらに向けられ、ナミも眉間に力がこもった。
「ちょっと肩車して。」
「はぁ!?」
「何でだよ」とやる気のなさを顔前面に押し出した表情を見せるゾロ。
「木の上のミカンが収穫できないのよ。」
「んなもん、梯子もってこればいいだろーが。」
「もう、うるさいな!! いいから早く!!」
ナミの念押しに仕方なく立ち上がるゾロ。
ほら、そーいうところ。
念押しされたら、仕方なくでも動いちゃうんだから。
「ほら。 早くしろ。」
そう言って屈みこむゾロ。
ナミは何も言わず、その首に跨った。
「どの木だ?」
「あれ。」
ナミが一本の木を指差すと、ゾロはそちらに向かって歩き出す。
「ほら、さっさと採れ。」
「分かってるわよ。」
ナミはブツブツ言いながら、木の上についたミカンをもぎとった。
「いいわよ〜。」と言うと、ゾロはまたゆっくりとしゃがみこむ。
「ん。 ありがとう。」
「へいへい。」
ゾロは片手を上げながら背を向けた。
一瞬だけ見えた表情に、ナミはまた肩を落とす。
『これはこれで問題ね。』
射程圏内にすら、入ってないじゃない。
ちょっとは照れたりしなさいよ、バカ。
近すぎて、
(遠い)
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久々のゾロナミ