恋って、何て面倒くさい。

好きな人には、たくさん話しかけたいし、触れたいし、構ってもらいたい。

でも、それが容易くできるポジションというのも、いささか不便なのである。


「ねぇ〜 ゾロー?」


ナミは刀の手入れをしているゾロの名を呼ぶ。

「あぁ?」とイカつい顔をこちらに向けられ、ナミも眉間に力がこもった。


「ちょっと肩車して。」

「はぁ!?」


「何でだよ」とやる気のなさを顔前面に押し出した表情を見せるゾロ。


「木の上のミカンが収穫できないのよ。」

「んなもん、梯子もってこればいいだろーが。」

「もう、うるさいな!! いいから早く!!」


ナミの念押しに仕方なく立ち上がるゾロ。

ほら、そーいうところ。

念押しされたら、仕方なくでも動いちゃうんだから。


「ほら。 早くしろ。」

そう言って屈みこむゾロ。

ナミは何も言わず、その首に跨った。


「どの木だ?」

「あれ。」


ナミが一本の木を指差すと、ゾロはそちらに向かって歩き出す。


「ほら、さっさと採れ。」

「分かってるわよ。」


ナミはブツブツ言いながら、木の上についたミカンをもぎとった。

「いいわよ〜。」と言うと、ゾロはまたゆっくりとしゃがみこむ。


「ん。 ありがとう。」

「へいへい。」


ゾロは片手を上げながら背を向けた。

一瞬だけ見えた表情に、ナミはまた肩を落とす。


『これはこれで問題ね。』


射程圏内にすら、入ってないじゃない。

ちょっとは照れたりしなさいよ、バカ。




近すぎて、

(遠い)



* * * * * * * * * *

久々のゾロナミ





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