顔に張り付いた髪の毛が気持ち悪い

頬を伝う水滴は、雨なのか汗なのか涙なのかさえも分からなかった

ゆっくりと来た道を振り返るが、人の姿はどこにもない

追いかけてこないか・・・

安心したような寂しいような、よく分からない感情が渦を巻いて、口からため息として吐き出される

「雨・・・冷たいなぁ・・・」

空を覆う灰色の塊から、容赦なく落とされる水滴たち

上着だけでも持ってこればよかった

・・・そんなことできるわけないか

あいつはきっと追ってこない いや、追ってこれない

私は膝を抱えてしゃがみこむ

「何やってんのよ・・・私」

呟きは雨の音にかき消された

ゾロと喧嘩をした

いつものこと

私が悪いのもいつものこと

ただ、朝からゾロとロビンが話しているのを見たから、ちょっとモヤモヤしてた

おまけに雨のせいで出航が遅れている

それらのベースの上に乗っかってきた「なんでそんなイライラしてるんだよ かわいくねぇな」という彼氏の言葉

傍から見たらなんてアホらしいと思うかもしれないけれど、

所詮私は、その程度のストレスにも耐えられない女だった

「うるさいわね!!」

気付いたら大声で怒鳴り散らしていた

さすがのゾロも、そこまでキレられるとは思っていなかったみたいで、目を見開いていた

それを分かっていて、私は怒鳴り続けた

何を叫んでいたのかはもう覚えていない

気がついたら船から飛び出していた

背後から私の名を呼ぶ声は聞こえたけれど「追ってこないで!!」と叫んで、島へ入った

追ってこないでと言ったくせに、心の中では追ってきて欲しかったなんて、都合が良すぎる

道の真ん中でうずくまる私は、一層強く膝を抱えた

どうやって戻ろうかな・・・

体の体温が低くなっているのは自分でもよく分かる 

早く帰らないと、みんな心配していることも分かっている

意地張って、大の大人が何やってるんだか・・・

また溜め息が漏れたとき

「ナミ」

優しく名前を呼ばれた

気付けば、体に当たっていた雨粒が振ってこない

私はゆっくり、顔だけ振り返った


「・・・何してんだよ」


ゾロがいた

傘を私に差し出して、中腰になってこちらを見ている

「・・・迷子にならなかったのね」

「誰が迷子だ なるわけぇだろ」

「お前の居場所くらい、すぐに分かる」と言われた

薄く唇を噛み締めて、顔を元に戻す

「何よ みんなに追いかけろって怒られたの?」

「言われなくても追いかけてた」

「かわいくない女を追いかけてどうするのよ」

「確かに、お前はかわいいってタマじゃねぇな」

その言葉が聞こえた途端、不意に頭の後ろに手が伸びてきた

強引に顔を向けさせられる

視界が暗くなったと思ったら、口を強引に塞がれた

「っ!・・・ん・・・」

冷え切った体に熱が回り始める

「・・・ふ・・・はぁ・・・」

ようやく解放された口で、めいいっぱい酸素を吸い込む

それと同時に、耳元に寄せられたゾロの口

そこから紡がれた言葉


「お前はいい女だよ」


耳を掠める声に思わず体がビクリと跳ねる

ゾロがナミの顔を覗き込む

ナミは顔を赤くしながらも、膨れっ面で言った

「こんなのズルいわ」

その反応に満足そうな笑みを浮かべたゾロは、またナミに顔を寄せる

1つ傘の下、2つの影が重なっていた



Two in One


(体半分雨が当たっているけど、それも気にならないくらい)
(夢中になるなんて、癪だわ)



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ユラさんに捧ぐキリリク小説
雨の中のキスってなんかいいよね(。-∀-)



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