オレンジ髪が町を行く

目的はもちろん、1番手を捜すため

ここはシャボンディ諸島 

七武海に飛ばされてから2年経った今、ここは一味の集合場所だ

3番手であるナミは、1番にこの諸島に来たのは一味きっての『迷子男』だと聞いた

シャボンディへは自分同様、誰かに送ってもらったのだと推測して、

この諸島内で迷っていないわけがない

そう絶対な自信をもっているナミは自分の勘を頼りに、迷子男を捜す

が・・・

「おい、ね〜ちゃん ここが何エリアか知ってるのかい?」

「女1人で動き回るなんて、危ないよ〜」

「俺たちみたいなのに捕まっちまうぜ?」

『うっとおしい・・・』

さっきから賞金稼ぎ丸出しの男どもが我先と声をかけてくる

そんな奴らをナミは天候棒一振りで難なくなぎ払っていた

だが、そろそろ我慢の限界

次から次へと声をかけてくる男たちに対する怒りと

迷子男が見つからない苛立ちはピークに達していた

そして気が付けば

「だぁぁぁ!! もう!! どこ行きやがったのよ、あのマリモ男―――!!!」

大声で叫んでいた

その音量には、声をかけてきた男たちも驚き、思わず後ずさる

「次から次へとうっとおしい!! さっさと見つけられなさいよね、あのバカ!!」

ナミが大きく肩で息をしながら、天候棒を再び構えた

と、そのとき


「・・・いきなりバカ呼ばわりはねぇだろ」


背後で声がした

そしてカチンという刀を抜く音

次の瞬間、自分の周りにいた男たちは吹っ飛ばされていた

背後で刀を鞘に収める音がする

ナミは構えていた天候棒を下ろし、ゆっくりと振り返った

そこには

「・・・よぉ」

苦笑いを浮かべるゾロがいた

「・・・久しぶりね」

ナミも肩をすくめて苦笑い

さっきまでの威勢のよさはどこへ行ったのやら

2年ぶりで何と声をかけていいのか分からなかった

聞きたいことはいっぱいあるのに

それはゾロも同じ

だが、お互い妙に照れ臭くて、何も言えずにいた

それからどれくらい無言の時間が続いただろう

先に口を開いたのはゾロだった

「そんじゃあ、おれはその辺ブラブラしてっから」

そう言って、片手を軽く振るとナミの横を通り抜けていった

「あ・・・うん」

ナミはそれに少し遅れた反応を返す

自分は迷子になっているであろう男を探しに来たのに、せっかく見つけた男をまた迷子にさせるとは、おかしな話だが

今のナミには追いかけることが出来なかった

「あら、ナミちゃんおかえり ロロノアちゃん見つかった?」

BARに戻ると、シャッキーがグラスを磨いているところだった

「見つけたわ レイリーさんは?」

「レイさんなら、散歩に出掛けるって言って出て行ったわよ」

そう言いながら、カウンターに腰かけるナミに水を差し出すシャッキー

ナミは貰った水を一気に飲むと、ため息をついた

「浮かない顔ね」

シャッキーがタバコに火をつけながら、カウンターへ乗り出す

「うん なんか・・・」

手に持ったグラスを握り締める

「ゾロを探しに行ったのに、いざあいつを見たら何も言えなくなっちゃった」

最後のほうは呟くように小さな声

「今、どんな気持ち?」

「う〜ん・・・」

「寂しい?」

「・・・うん」

シャッキーは口のタバコを手に持ち変える

「2年前のあなたちは恋人同士?」

「そんな可愛らしいもんじゃないわ でもまぁ・・・」

付き合っていた

恥ずかしくて、最後のその言葉を濁した

付き合っていた人と2年間も音信不通だった

会いたかった でも会えなかった

それを2年経った今、再会したのだ

始めの一声は何と言うべきなのか

結局、微妙な挨拶で終わってしまった

「私が持った、あなたの第一印象は・・・」

シャッキーが口から煙を吐き出す

「天真爛漫な明るい子」

その言葉に顔を上げる

「きっとロロノアちゃんにとってのあなたも、そうなはずよ」

ゾロにとっての自分・・・

「2年ぶりで照れ臭いのは分かるけど、引いちゃうなんてナミちゃんらしくないわ」

シャッキーが無邪気な笑顔を浮かべる

「私らしく?」

「そうよ あなたは強引にロロノアちゃんを引っ張っちゃえばいいのよ」

・・・そうだ 2年前だってそうだったんだ

付き合っているのに、いつだって顔を合わせれば言い合いをした

目の前で大口を開けて笑ったこともあるし、わがままを言ったこともある

私は、それでいいんだ

「・・・私ってば、なに悩んでたんだろ」

ナミは小さく呟くと、口元に笑みを浮かべる

「本当に私らしくないな〜 か弱い女の子みたいにクヨクヨしちゃってさ」

自分で自分のことを笑い飛ばした

「ありがとうシャッキー 私、もう一度ゾロ探しに行ってくる」

「気にしないで あ!あといいこと教えてあげる」

シャッキーはナミに耳打ちする

その言葉に少し顔を赤くしながら、ナミはBARの扉を開けた

ナミはまた、自分の勘を頼りにゾロを探す

さっき出会った場所周辺にいるわけがない

ましてや、あの男ならなおさら

でも、今回は見つけられる自信があった

そして案の上

「っ!! 見つけた!!」

マングローブの根元に座り込んで眠っているゾロを見つけた

無法地帯だというのになんと危機感のない様だろう

まぁあの男のことだろうから心配はいらないんだろうが

ナミは大きく深呼吸をして、ゾロの元へ

追い風が吹いて、ナミの伸びた髪を揺らす

それと同時に、背中を押されているような感覚を覚えた

大丈夫 いつもどおりの自分で行くんだ――

ナミが寝ているゾロの横で立ち止まる

すると、ゾロは気配を感じたのかゆっくりと瞼を開いた

目線をナミに合わせると、驚いたように飛び起きる

その慌てように、ナミはまた肩をすくめて苦笑いした

「あんた、こんなとこで寝てたら、賞金稼ぎに狙われるわよ?」

笑いながらゾロの横に座り込むナミ

ゾロはまだ驚いているようだが、「あぁ・・・」と言うと、今度は木にもたれ掛かって、頭の後ろで腕を組んだ

「別に心配はいらねぇよ 俺があんな奴らに首をとられるわけがねぇ」

「いつ私があんたの心配をしたのよ」

「何ぃ!?」と喧嘩口調で言い返すゾロ

あぁ、そうだ 2年前だってこんな感じだったんだ

お互い容姿は変わっても、中身はちっとも変わってない

付き合っているのに、ちっとも甘い雰囲気にならないんだ

「あんたを連れ戻しに来たのよ」

ナミはまた少しゾロに近付く

「連れ戻しに?」

「そう♪ シャッキーに言われてね」

小悪魔な笑みを浮かべる

「BARに部屋があるから、夜眠るならそこで寝なさいだってさ」

「別におれはそこらへんで寝れるぞ?」

「あんたはよくてもシャッキーは心配してるの 私はどうでもいいけど」

「おい、お前・・・」

最後の言葉に、ゾロの眉間に皺が寄る

「それに・・・」

だが、それにはあえて触れずに話を続けた

「今晩はシャッキーもレイリーさんも出て行っていないから、好きにお酒飲んでもいいよって」

その言葉にゾロは顔をこちらに向ける

『酒』という言葉に反応したのか それとも・・・

「久しぶりに、一緒に飲まない? 話したいことだってあるし」

ゾロはその言葉をどう解釈するのだろう

不適な笑みを浮かべるナミを、しばらく無言で見つめるゾロ

だが、不意にフッと笑った

「そーだな 久々に飲むか」

あぁ『酒』のほうで解釈したのね ま、飲むの楽しいからいいんだけど


そう思った直後、不意にゾロの手が伸びてきて

それはナミの頭の後ろへ回り

勢いよく、でもゆっくりと引き寄せた

「あぁ、やっぱり来たか」と瞬時に理解したナミは目を瞑る


マングローブの木の根元で重なる影



変わらないもの

(お互いの顔が離れたとき、ゾロが耳元で呟いた
 「覚悟しとけよ」
 その返事として、ナミは笑って見せた)



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200番キリリク小説
こんなの書いてたらニヤニヤが止まr(黙れ)

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