夜が来た

昼間はビビにあんなこと言っていたけど

いざとなると、あたしも緊張しちゃうのよね〜

もう、あいつ見張り台にいるかな?

見張り台に続くロープを掴んだ


「ゾロ〜 いる?」


見張り台の足元からひょっこりと現れるナミの頭

ゾロは、待ち構えていたその人物に


「おう」


と、うっすら笑顔で短く答えた

「うわぁ 結構寒いわね」

台に降り立ったナミが自分の両肩を抱きながら、辺りを見渡す

夜の海は、見渡す限り真っ暗で、唯一の明かりは空で弱々しく光る星たちだけだ

「コート持ってきて正解だわ」

そう言いながら、ゾロの真横に腰を下ろす

「風邪ひくなよ?」

「もうひかないわよ」

つい数日前、高熱でぶっ倒れていたナミはゾロの言葉に、舌を出しながら答えた

そんなナミに腕が伸びる

肩を捕まれたかと思うと、勢いよく引き寄せられた

一気に近くなる距離 お互いの肩が既に触れている状態でゾロは言う

「ほら 毛布一緒に入んぞ」

そう言って、大きな毛布をナミの肩にかけた

そんなゾロに不服そうなナミ

「あんた、毛布全部はくれないのね」

「あたりめーだろ おれが寒い」

「寒中水泳して雪崩に巻き込まれた男が何を言う」

「おめーだって、高熱で山登ったくせに」

「あたしは登ってないわよ ルフィが登ったの」

「んなの一緒だ」

ナミの言葉に、一気に不機嫌そうに眉間の皺を濃くするゾロ

おおよその見当は付いているものの、芽生えた悪戯心はさらに追求を続ける

「一緒じゃないわよ あたしはおぶってもらってただけ 登ってくれたのはルフィだも・・・」

最後まで言い終わる前に、頭の後ろに手が回った

引き寄せて、勢いよく唇に噛み付く

「・・・っ・・・・んっ!!!」

息苦しさに何度も胸板を殴ると、名残惜しそうに離れていった

息を整える暇も無く、体を引かれる

耳元で低い声がささやく

「おれが、おぶってやりたかった・・・」

その言葉に何とも言えず、ナミはゾロの背中をあやすかのように優しく叩いた

するとよりいっそう抱きしめる力を強くするゾロにナミは笑う

「嫉妬深い」

「うるせー なんとでも言いやがれ くそっ」

「本当は嬉しいだなんて、絶対に言ってやらない」とナミは心に決めて、また笑った

「そういえば、お前俺に渡すものがあるんじゃねーのか?」

やっとナミを解放したゾロが、元の位置に座りなおしながら言う

「あら知ってるの?」

「ビビに聞いた」

「知ってるわ」

「じゃあ第一声は何だったんだよ」

ビビが顔を赤くしながら女部屋に戻ってきた昼間を思い出す


『あの、Mr.武士道にナミさんの分は?みたいなこと聞かれたんですけど・・・』

『あいつが? 何て言ったの?』

『多分、夜渡すんじゃないかって・・・』

『あいつ、どんな顔してた?』

『笑ってました とても不敵に・・・』


「渡すものでしょ? あるわよ、ちゃんと」

ナミは持ってきたコートのポケットから箱を取り出す

「はい チョコレート」

「ん」

ゾロはさも当然だとでも言わんばかりに、その箱を受け取った

ガサガサ

「今開けるの?」

ナミの言葉を無視して、ゾロは包みを開ける

中から出てきたのはオシャレな形のチョコレート

「・・・チョコなのか?」

「見れば分かるでしょ?」

ビビはゾロが甘いものが好みではないと知っていた

ナミはそのことを知っているから、ナミから聞いたのだと思っていたが・・・

甘いものが苦手と知っていながら、なぜチョコレートを?

「不思議に思うでしょ?」

「あぁ」

「食べてみたら分かるわよ」

勝気な表情で言いのけるナミを、不服そうな表情で見つめるゾロ

おもむろにチョコレートをつまむと、口の中へ掘り込んだ

何も言わずに、口を動かし続ける

「・・・・・・・・・・・」

「あんたなら分かるでしょ?」

ナミの言葉と同時に、ゾロはチョコレートを飲み込んだ

「酒が入ってんのか・・・」

「そう これならあんたでも食べれるでしょ?」

確かに

酒好きのゾロに、このチョコレートは酷ではない

が・・・

「甘ぇ・・・」

親指で口元を拭った

「文句言わないの これがあたしなりのバレンタインよ」

ナミが後ろの支柱にもたれかかる

「お前なりの・・・ねぇ・・・」

ゾロは空を見上げながら、もう1つチョコを口へ放り込んだ

「何だ、ちゃんと食べるんじゃない」とナミは呆れたように溜め息をつく

喉の動きが止まったかと思うと、ゾロがナミに視線を向けた

視線逸らさず見つめあう2人の間を、冷たい海風が駆け抜ける

次の瞬間、

ナミの体に影が落ちた


「それじゃあ・・・」

柱にナミの顔を挟むように両手を付いて、目線を合わせる

そしてニヤリと笑った

「俺なりのお返しとやらをしようか」

そのセリフにナミも唇の端を持ち上げて、あくまでも挑戦的に言う

「・・・ホワイトデーはまだ先よ?」

「前払いだ ありがたく受け取っとけ」

そして奪われた息



キツい酒と、熱くて甘い味がした



チョコレートの味

(癖になりそうね)


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