例えば

私がバロックワークスのエイジェントじゃなかったら?

普通の社員なら、顔すら覚えられないまま終わってしまっていたのかしら

存在すら確認されないまま、私は貴方の刀の餌食になっていたかもしれない


例えば

私とMr.9がログポースを彼らの船に落としていなかったら?

私たちはまったく関わることなく、いつもどおり仕事に戻っていたのかしら


例えば

私がウイスィーピークでMr.0の名前を口にしなかったら?

迷惑をかけることもなかったけれど、この船に乗ることもできなかったのかしら

こんなのおかしいけれど、私はこの船に乗ることができたからよかったのだと思う


例えば

私があの夜、貴方に話しかけなかったら?

あの、初めて船に乗った日の夜、外で見張りをしている貴方に何となく会いに行かなかったら、私は

この気持ちに気付かずに済んだのかしら

こんなに、悲しい気持ちにならずに済んだのかしら


例えば

貴方のキスを拒んでいたら?

こんなに貴方に堕ちることはなかったのかしら

後ろめたいと思っているのに、貴方の顔が近付いてきた瞬間に幸せを感じてしまう私

本来の目的を見失いそうになる私がいる


例えば―――


私がアラバスタ王国の王女でなかったら


貴方たちとは出会えなかったのかしら

でも、私はこの立場なしで、貴方たちと出会いたかった

国の人たちは大好きだし、国を守りたいという気持ちも本物

だけど・・・


私が王女でなければ

貴方たちのこの先の旅に着いて行けたかしら


こんなことを考えるのはおかしいって分かっているけれど

だけど・・・


「ビビ」

優しく名前を呼ばれて、後ろから腕が回される

短い緑色の髪の毛が頬に刺さって、妙にくすぐったい

船長が目覚めるのも時間の問題

貴方といられるのも時間の問題


貴方の目を塞ぎながら、私は自分から口付けた

私の目から零れ落ちた、涙を見られないように


例えば、私が王女じゃなかったら

こんなこと考えてはいけないと分かっていても

考えてしまう

それくらい、私は―――



例えばの話

(貴方と離れるのを拒んでいる)


* * * * * * * * * *

私にしては珍しいシリアス作品

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