体が痛い

上に重りが乗っているみたい・・・

一体なんで・・・

はっ!!

ビビは目を見開いた

目の前に広がるのは白ばかり

しばらく、何が起こったのか理解できずに静止していたが、頬を刺す冷たい痛みに、慌てて体を起こした

少々体は重かったが、強引に腕を突っ張ると、バサバサッという音と共に、重りの存在はなくなった

視線を移すと、足元はまだ白の塊の中に埋もれている

そこでようやく思い出した

『そうだわ 私たち雪崩に巻き込まれて・・・』

ここはドラム王国

ウソップと2人で魔女の異名を持つ医者を追いかけていたところ、突然雪崩に遭遇し、飲み込まれてしまったのだ

『あっ!! ウソップさん!!』

ビビは慌てて立ち上がり、わずかに残った体の雪を払い落とす

そして辺りを見渡した

相当大規模な雪崩だったらしく、辺りにあった木々すらも白く覆われている

「ウソップさん!!」

ビビはウソップの名を呼びながら、視線を動かす

そして、見つけた

雪の中から覗く、ウソップの長い鼻を――


その後ビビはあの世を垣間見ていたウソップを叩き起こし、歩いている

「とりあえず、今の状況を確認しないと・・・」

顔をパンパンに腫れ上がらせたウソップが「そうだな」と辛うじて聞き取れる発音で言う

いくら起こすためとは言え、少しやりすぎたかな?とビビはかなり反省していた

踏み応えのない雪をひたすら前へ前へと進む

ビビの踏み出した足の裏が、地面にある何かを捕らえた

「えっ?」

そのまま、重力に逆らわずに倒れこむ

ビビが踏んだところが浮き上がった

「ヒィッ!!」

ウソップ顔色を変えて飛び上がる

雪の中から現れたのは・・・

上半身裸のゾロだった

「うぅ〜 さっみ〜な〜」

両手で体を抱き、凍えているゾロ

ビビは言葉を失った

何故、船番をしていたはずの彼がここに居るのか?

「これも一つの寒中水泳か?」などと随分ぶっ飛んだことを言っている男を目の前に、ビビは倒れた状態から動けなかった

もちろん理由は寒いから、なんてつまらない理由ではない

少し間が空いて、最初に口を開いたのはウソップだった

「ゾロ・・・?」

自分の名を呼ぶ声に、ゾロは視線こちらに向ける

ビビと目が合った瞬間、表情が柔らかくなった気がした

そして、一言


「おぅ、ビビ」


ビビは更に目を見開いた

心臓が跳ね上がる

今・・・なんて?

「お前ら、なんでこんなとこにいるんだ?」

「「それはこっちのセリフだーー!!」」

連続して繰り出されるツッコみどころ満載なセリフにようやくビビの口が開いた

だが、その口はまた痙攣して開かなくなる

ゾロは、顔がパンパンに腫れ上がって誰か分からなくなった長鼻をウソップだと辛うじて認識し、話しかけている

どうやら彼も雪崩に巻き込まれてしまったようだ

「ん? おい、いつまで座り込んでるんだ?」

「へっ!?」

急に声をかけられて飛び上がるビビ

もちろん相手がゾロだから

「あ、いえ・・・別に・・・」

と、言いつつも足に力が入らない

「なんだ? 寒さで固まっちまったのか?」

ゾロが眉を顰め、首をかしげている

「あ、あはは そうみたいです」

ビビは苦笑いを返す

多分違うけど、そういうことにしておこう

「ほら」

ゾロが手を差し出す

「えっ!?」

「何してるんだ? さっさと立て」

もう一度促すように、手を突き出す

ビビは慌ててその手を取った

途端に引き上げられる体

「あ、ありがとうございます」

ビビはズボンについた雪を払いながら、お礼を言う

ゾロは何も言わず、ただ少しだけ笑った

「さぁて、とりあえず町へ行くか」

だいぶ腫れの引いたウソップが、歩き出し、ゾロもそれに続いた

その後ろ姿を見ながら、ビビは両手を胸前で握り締める

初めて――


「名前を・・・呼んでくれた」


そしてビビも慌てて2人の後を追った



小さな喜び

(小さな小さな喜びのお話)




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原作とセリフが若干ずれていたら、ごめんなさいw
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