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ジーザスお前もか


「名前兄さん、どういうことか説明してもらえるかな?」
「及川さんちの徹くん、何だね藪から棒に」
「何で烏野に入り浸ってるの?」
「…!!?」



最近ようやく大学と烏野高校のバレー部の一応援者(雑用)としての両立にも慣れてきて、久しぶりの何もない日にワクワクしていたところだったのに、頼んでもいない厄介事が自らやって来たというわけで冒頭。
実家の三軒隣に住んでいた俺と彼、及川徹くんは、世間一般的に見ると幼馴染の分類に入る。でも実際は歳も離れていたし、何より圧倒的インドア派である俺と、元気印なアウトドア派である徹くんとはそんなに親しくしていたわけじゃなかった。まあ週一ペースで俺の家に転がり込んでゲームしたり部活の愚痴を言ったり勉強を教えたり、そんな関係だったハズで、そもそも俺が大学に入って一人暮らししてからは若干疎遠になっていた。俺がご飯をねだりに実家に帰った時以外は。
あっという間に俺の身長を抜き、近所でも有名なモテ杉モテ男に成長した徹くんは、何故か今俺のアパートの一室にいる。正直に言おう、わけがわからないよ。



「最近やけに家に帰ってこないなと思ったら、まさか俺に隠れてこんなことしてたなんてね」
「その徹くんのチャームポイントであるいい笑顔が今はこんなに怖いなんて…」
「名前兄さん、俺が何部か知ってる?」
「…バレーボール部…カナ…?」
「うん、そうだよ大正解。で?今どこで何をしてるんだっけ?」
「烏野高校のバレー部の雑用でござる」
「ふーん、」



ナニコレ怖すぎる。
高校生の少年に尋問される大学生の図は第三者から見たら目頭が熱くなる展開じゃないかな?可哀想すぎて。というか俺若干半泣きだからね?何この迫力お前本当に高校生かよと問い詰めたい。
ただでさえ身長差があるのに俺正座で徹くんは仁王立ち。この角度から彼の表情は全く判別できません。



「あーあ、兄さんが運動に興味なさそうだから俺は部活のことでお願いなんかしたこと無かったのに」
「いや実際今も興味ないけど」
「なら何でこんなことになってんの」
「それは本当に俺が一番聞きたいところだわ」



徹くんってこんなに子供っぽい子だったっけ?もう少し飄々としていつでも自信満々なイメージがあるんだが、これも思い出補正なのだろうか。散々文句という名の尋問をして少しは落ち着いたのか、ふう、とため息をついて目の前に腰を下ろした彼は、相変わらず同じ男として虚しくなる程イケメンだった爆発しろ。



「俺女だったら徹くんのイケてるメンズっぷりにまんまと絆されてたかもしれんな…」
「…名前兄さんってホント駄目人間だわ」
「なんだと」
「ここは空気読もうよ」



その後俺は徹くんからあの影山くんの先輩だった話、青葉城西高校というバレーの名門で雑用やってよという死刑宣告を延々と聞いていたら夜が明けていたのである。しっかり着替えとか歯ブラシとか持ってきていたあたり、コイツさては最初から泊まる気満々だったなと憤慨した。あと歯ブラシ置いて帰る=また来るわってことだよなもうどうしろって言うんだ。
今年厄日だったっけ。



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「名前さん!!」
「ハイ?」
「これどういうことですか!?」



次の日いつものように練習に顔を出したらいきなり影山くんと日向くんに囲まれて辛い。俺何かやらかしたのだろうかとズイッと眼前に突きつけられたスマホに目を向けると、そこには俺の寝顔が写っていた。オイふざけんなよ顔半分潰れてよだれ出てんじゃん完全に公害だよ!つーか撮ったの誰だよいつだよと珍しく怒りに震えた。が、その怒りは悲しくも一気に鎮火することになる。そう、to欄に書いてある名前を見たことによってな…。

及川先輩

ハハ…影山くんは中学の時の後輩って言ってましたもんね…。そりゃあアドレスの一つや二つ知ってますよね…。
二人から矢継ぎ早に聞かれる質問なんて一切耳に入らず、厄介な幼馴染にただただ脱力した今日この頃。全米が泣いた。