×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

超能力兄弟と私


私が超能力を使えたら、とりあえず朝はぎりぎりまで寝ている。そしてお金持ちになる。何とも薄い願望だが、それだけ使えるわけがないが前提の問いであるためここまでおざなりな回答なのだ。遅刻しそうで全力で走っている時に瞬間移動が使えたらな…!と思うのは絶対に私だけではない。
呆れたように「別に超能力者じゃなくてもいいじゃん…」と呟いたモブくんは、本物の超能力者である。

休日出勤という名の地獄への片道切符だった電車が運よく遅延したのと、一人暮らしでは食べきれない量のりんごを貰ったため、ご近所さんのモブくんの家に遊びに来た現在。聞くところによると弟の律くんもとうとう超能力に目覚めたらしいよかったねおめでとう。


「漫画読みながら言う台詞ですか」
「この続きある?」
「俺は絶対に名前さんみたいな駄目人間にはならない」
「オイ」


ついこの間の大学生活に戻りたいと思うくらいメンタルが弱っている私にジャブとはいい度胸じゃ撫でくり回すぞ。既に頭も運動も律くんはピカイチなのに更に+αで超能力なんか使えちゃうチート仕様とか勝ち組決定じゃないですかーヤダー。
その点これ続きですと私に漫画を手渡ししてくれるモブくんは実に良い。愛でたい。この間とうとう越された身長に血涙を流すレベルでショックを受けたが、素直な子ほど可愛いものよ。欲望を隠すこともなくそーれわしゃわしゃと手触りの良い髪を撫でると真顔で払われた。辛い。


「名前さん」
「はいなんですか」
「僕、一応男ですよ。思春期の男の頭を撫でるなんて正気の沙汰じゃない」
「エッ」


ファー。と間抜けな声が出てしまってお姉さんは恥ずかしいです。話を戻すと、今モブくんは何て言った?え?男?払われた腕を掴まれてグイっと顔が近づいてくるなんてこれどこの乙女ゲーですか少女漫画ですか。灰色の思春期を過ごした喪女の私には刺激の強すぎるシチュエーションに冷や汗が止まらない。ちょ、これ顔赤くなっていませんか!
と思っていたら私の腕を眺めて「肉付きがいいな…」的なことを思っていそうなモブくんに泣いた。これは泣いても許される。上げて落とすとか最近の男子高校生すごいな!


「私の腕は触り心地がいいですか」
「え!?い、言ってない!」
「ほらな」
「名前さん毎回ダイエット失敗してるもんね」
「律くん表出ろ」


超能力の危ない組織が襲ってくるとか、正直一般ピーポーの私からすれば現実味がない話で、気を付けろって言われても何をどう気を付けるんやって感じです。ついでに言うとそんな寄せ集めみたいな超能力者集団がどんだけいようが、ウチの純超能力者兄弟に勝てるわけないだろと言いたい。

敗因はこのよくわからない余裕こそがフラグであるという現実を忘れていたこと。
まあ要約すると律くんが言っていた通り、よくわからない組織に完全に一般人の私が巻き込まれて死にかけたりモブくんが尋常じゃないくらいキレたり失業したりするわけなのですが、正直泣きたい。