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ふええ働きたくないよお><

リーマンショックやら何やらで就職難という荒波に揉まれまくった結果、華麗に就職浪人しましたが何か?高校の時の自分は大学に進学して大企業とはいかなくてもそこら辺の企業に就職して、結婚という高いハードルを越えてゴールかな?なんて思っていましたよ。ええ。第二ステージで躓くとか人生積んだ。
そんなこんなでさあて来世でガンバロ!という電波発言をかましながら山中を歩いていたら、まさかの廃れた動物園。まさかの動物人語を喋るの巻。まさかのウサギによる拉致監禁。まさかの就職決定。まさかまさかの給料無し。



実家にかえりたいです。



「名前さん、これはどうすればいいですか!?」
「それはね、園長の顔にぶん投げればいいよ」
「えええ!?無理です無理です!!」



華ちゃんは私のかわいい後輩であり、第二の被害者だ。
クソ動物達にこき使われて三日、一人じゃ無理死ぬと募集を出したら引っかかってしまったかわいそうな子。ほんと申し訳ない反省も後悔もしてないけど。ここにいるといくら動物好きでも動物嫌いになると思う。そんなレベルで皆クソ。ただし女性陣を除く。
この子が入ってからこの逢魔ヶ刻動物園はだいぶ変わった。水族館を潰したりサーカス団を吸収したり。全体的にロクなことをしていない。していないけれど客足ゼロの寂れた動物園がそこそこの知名度と来園数を稼ぐようになったのだから、ある程度はプラスの方向に動いているのかもしれない。



「飼育員一号またワシに喧嘩を売る気か!?」
「売らないから帰れ」
「なんじゃつまらん」



ぷいっとつまらなそうに華ちゃんを構い始めた園長に殺意がわく。お前も少しは働け?な?言っても無駄なことは分かっているので心に留めるに限る。華ちゃんのおでこから人参が生えようとも、私が平和ならそれでいい。それでいいのだ。



「そこのウサギとブス二人!いいから仕事しろよ!」
「ブスにブスとしか言えないクソ道乃家さんじゃないですかこんにちはボキャ貧死ね」
「名前てめえ鞭でひっぱたくぞ?」
「やっぱりそういう趣味だったんですね引くわードン引きだわー」
「よしそこに正座しろ。喧嘩売ったんだからこのくらい我慢できるよねー!?」



鞭をひゅんひゅん鳴らしながら近づいてくる道乃家さんはいつ逮捕されますか?三十路のくせに頭は無事なのか。大丈夫じゃないからピエロみたいな格好してるのか納得。
とはいえ私は痛いことは大っ嫌いなのでササッとシシドくんの後ろに回り込む。ここで働き初めて二ヶ月、私の回避能力が日々レベルアップしている。思い出したくもないクソシャチにイガラシさんとまとめて攫われ海で溺れて死にかけた事件や、クソクジラに蹴飛ばされた事件、更にはクソ馬に「君は雑草みたいな顔だな!素晴らしい!」と言われる事件まで様々ある。最後のが一番心に来た。



「なんだよ名前!俺は今修行で忙しいんだよ邪魔すんな!」
「わー、シシドくんかっこいいしつよいからあのクソピエロ凹ますことなんて簡単だよねーシシドくんのかっこいいとこみたいなー」
「クッソ仕方ねえな!よーく見とけよ!?」



ぎゃーぎゃーうるさいこの光景は、毎日の日課になっていて。人生に絶望していた二ヶ月前と180度違うこの光景に苦笑せざるを得ない。



「お前、最初にあった時よりイキイキとしとるな」
「そりゃあ毎日死にてえとか思う暇もないくらいドタバタしてますから」
「それはよかったな!死んだら面白いことなんて何もないじゃろ!」



潰しかけた水族館もクソ伊佐奈が戻ったことで年内には復活すると連絡があったし、呪われた動物園も水族館もサーカスも、どれもいい方向に進んでいると思う。伊佐奈から俺が戻ったからにはテメーらの好きにはさせねえからな首洗って待ってろ的な愛のコールを頂いたので責任をもって着信拒否にしておいた。なんであいつ私の携帯番号知ってるの怖い。御曹司怖い。個人情報ってなんだったの。



「私に迷惑が掛からなきゃそれでいいです」
「それは無理じゃな」



この野郎。