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俺氏、ハンターの世界に行くの巻

どうもこんにちは、俺です。
ジェノスの兄としてあの世界に生まれ変わってから早二十云年、精神的には四十歳オーバーという笑えない状態だった俺が、何故かまた泣くことしか出来ない赤ちゃん状態に。昨日は普通にサイタマ氏とご飯食って寝たはずですよねホントどういうことですか?俺いつからトリップ体質になったの?
あまりいいとは言えない視界で情報を得ようとするが、高そうな家具とテンションがやけに高い母親らしき人しか認知できない。母親らしき人に関しては視覚じゃなくて聴覚でしか認識できてないからな。マジレスするわ、うるさい。



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朗報。聞いて聞いて、今回俺が来た世界ね、俺が前の前の世界で知ってる世界だった。
訃報。その世界は比較的人が死ぬ漫画の世界で、尚且つ俺は暗殺一家としてオギャー。
ゾルディック家長男のナマエです!よろしくお願いします!多分俺イルミとかキルアとか生まれる前に死ぬと思う。


当然俺も暗殺の為の特訓とか毒を体に慣らしていくとか拷問の訓練とかを施されるハズだった。で、俺が赤ちゃんの時、さあそろそろ毒に体を慣らしていくぞ〜というマジキチ思考の元、本当にごくごく少量の毒を飲まされたわけである。
結果一週間生死の境を彷徨った俺。弱す。
幸か不幸か生まれつきの虚弱体質で、医者にも無茶すると普通に死んでしまうでとお墨付きをもらった俺は、十歳になる今まで普通に育ててもらった。こんな暗殺一家としては出来損ない以外の何者でもない俺だが、家族は特に俺に対して差別はしていない。むしろ体が弱いからか全力で過保護全開の待遇を受けている。酷く申し訳ない。



「ナマエ兄さんって父さんにも母さんにも似てないよね」
「…!!!?」



一家団欒の夕食時に全く空気の読めない発言をカマしてくれた我らがゾルディック家次男(本来は長男)のイルミくんのお陰で空気が凍った。
そう、そうなのである。俺、何を隠そう日本人代表フツメン選手。対するは美男美女軍団であるゾルディック家。はっきり言っていい?これっぽっちも似てねえ!



「何を言ってるんだイルミ、ナマエの黒髪はお前の髪にそっくりだぞ」
「そうよイルミちゃん!確かにお兄ちゃんは美人でも美男子でもないけど、とっても愛嬌のある顔をしてるじゃない!」
「父さん母さんの思いやりが逆に胸を抉るぜ…」



ナマエちゃん!お母様と呼んで!という母さんの声は無視して部屋に引きこもった。世知辛い。



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「ナマエ、必要最低限体を鍛える為にも“念”というものを覚えてみんか?」
「じいちゃんのその顔は人を騙すときの顔だって俺知ってるんだからな」
「ムム」



一応この世界では虚弱体質である俺に対して、世界中を探してもひと握りしかいない念の使い手になれとかどんな作戦だよ。色々すっ飛ばしすぎだろ。
でも俺の言葉なんて聞いちゃいないじいちゃんは手のひらに念を集めて俺に向けてくる。ちょ、ヤメテしかもそれ無理矢理こじ開けるタイプのやつ!せめてゆっくり精孔を目覚めさせる方をお願いしたいんですけど!!

ん?じいちゃんの念が、見える?



「やはりな。ナマエ、お前には戦闘の才能はからっきしだが、こっちの才能はずば抜けてあったようじゃ」



そう言ってにやりと笑うじいちゃんの顔は、間違いなく暗殺のプロの顔だった。いい顔しとるでえ…。



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「ナマエ」
「なんだいキルアくん」
「俺明日家出るわ」
「ほうほう」
「…反対しねーの?」
「反対するも何も、俺がキルアを止めた所で三秒でぶっ殺されるわ」
「で、さ」
「そこは否定しないのかよ」
「俺と一緒に行かね?ハンター試験っての受けに行くんだ」
「いってら」
「ナマエのばーーーーか!!!死ね!!!」



ゾルディック家として暗殺の教育なんて一つも受けていない俺を、自分でも倒せるクソ雑魚と判断したキルアは俺を呼び捨てで呼びます。な、泣いてなんかないんだからね!そんな反抗期真っ只中なキルアと俺の関係性は正直良くわからない。俺、無駄に年取りすぎて年々人の気持ちに鈍感になっていってる気がするんですけど。精神年齢で数えると大変なことになってしまう。半分植物。
何の地雷を踏んだのか、俺の部屋の扉をバタンと閉じて去っていったキルアを横目に、原作突入かーと遠い目。ハンター試験なんて受けたら確実に死んでしまいます。何故俺が受けると思ったのか、そこを我が弟に小一時間問い詰めたい。念使っていいならまだワンチャン…ないかなあ…。



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ナマエ兄はこの家の人間としては限りなく異質な存在だと思う。
殺しが免除されているからという理由だけじゃなくて、こんな閉鎖的な空間で育ったとは思えない人間性というか、最初からそうあるべき存在として生まれてきたというか、言葉で表現するのは難しい。自分で言うのも何だが、こんな異質な環境だからこそ余計にそれが目立ってしまう。
暗殺者として教育されてきた俺達がナマエ兄を家族愛を超えた目で見てしまうのはこれが理由なんだろう。

まあ俺はナマエ兄の部屋に監視カメラを設置するだけで済んでいるけどね。他の奴らよりは正常正常。
それにそのお陰でムカつく弟の計画も知ることが出来たし、やっぱ俺賢いな。



「キルは本当に馬鹿だね」
「あ?何だよ豚くん」
「…!フン、お前は本当に救えないよ、ナマエ兄もたいそう鈍いけど。大体イル兄がナマエ兄をこの屋敷から出すわけないじゃん」
「…別に兄貴がどうとか関係ねーし」
「つーかぶっちゃけナマエ兄はキルのことそんなに好きじゃな」
「死ねよ」



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キルアさん明日旅立つって言ってましたよね。あれ、俺の知らないところで一日終わってたとか?んなわけあるか。



「キルア氏、キルア氏、これどういう状況?」
「ん?拉致」



キルアに担がれながら山道を鬼の速さで下っていく俺氏、キルアの足が地面に着くたびに俺口から内蔵出そうになるんだけど。口の中鉄の味するとかこれ完全に吐血しとるやん辛い。

キャアアアとやけに嬉しそうな母さんの悲鳴が屋敷内に響いたと思ったら、俺の部屋の扉が乱暴にあいた結果がこれ。恐ろしいな、全くわけがわからない。このまま原作突入とかは本当に勘弁していただきたい。あのトランプの人を今後一生視界に入れたく無いんですよお兄ちゃんの気持ちを組んでここは管理人室に俺を捨て置いてくれ。



「だいじょーぶだいじょーぶ、俺ついてるし」
「お前のその自信が今に自分を滅ぼすんだぜ…」