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19

 細くて長い指が、白い筒を挟み込む。そのまま薄く開いた口に吸い寄せられるように、赤木さんはたばこに口付けた。ああ、うらやましい。ずるい。わたしだって、赤木さんにキスしたいのに。彼の唇を占領し続ける白い筒にむくりと醜い感情が顔をのぞかせた。

「なに」
「えっ」
「そんな見て、どうしたの」

 ゆるりと気だるげな目をこちらに向けた赤木さんに心臓が嫌に高鳴った。ばくばくとうるさい心臓を押さえつけるように服を握りしめる。ばれてしまったらどうしよう。子供っぽいと思われてしまうかな。面倒臭い女だと思われてしまうだろうか。頭を抱えたくなるような悩みに、声が出ない。そうしていたら赤木さんの口から白い煙が吐き出された。線を描いて、広がって。上に消えていく紫煙の先をじっと見つめる。

「言わないとわからないけど?」
「うぅ……」

 意地悪く口の橋を釣り上げる赤木さんに小さくわかっているくせに、と唸ってみるもきっと無駄だろう。こうなったらきっとわたしが見つめていた理由を言うまで逃してはくれない。ええい、どうにでもなれ。

「たばこが、うらやましいんです!」
「……は?」
「だっ、だから、たばこは! なんもしなくても、赤木さんにちゅーされて、いいなって、思って……その」
「……フフ、なんだ」

 ああもう、顔が熱くなりすぎて頭がクラクラしてきた。周知の涙で目の前が滲んで、赤木さんがぼやけてしまう。わたしの言葉を聞いた彼はいっとう楽しそうに笑って、タバコを灰皿に押し付けた。

「じゃあ、あんたは俺にキスされたかったってこと?」

 じ、と彼の瞳がわたしを射抜く。先ほどとは違う心臓に高鳴りが全身を襲って、まるで身体中が心臓になってしまったかのようだ。うまく言葉が出てくれなくて、口をついて出るのは意味を持たないものばかり。赤木さんの大きな手が伸びて、わたしよりも温度の低い指先が頬を撫でる。かさついた男の人の指に図らずも、熱のこもった吐息が漏れだす。

「ぅ……あ」
「名前」
「は、ぃ」
「どうなの?」

 段々と近づいてくる顔に耐え切れず目を閉じて、口を開く。そうして小さく吐き出した言葉を聞くより早く、降ってきたのは先ほどまでは白い筒が占領していた彼の唇だった。
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