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「あ」
 雪だ。窓際に座ってマフラーを編んでいたら急にお尻が冷えてきてもしかしてと思って窓の外を見てみればしんしんと降り始めた雪。なんだか珍しいような気もする。初雪だ。見慣れない雪にふと思い出す。そういえば赤木さんって傘。
「持ってないよね」
 慌てて編みかけのマフラーをカゴにしまって、戸棚の奥へと隠す。もしかしたら雪は止むかも、とか折りたたみ傘くらい持っているのかもとか。色々考えたけれど結局わたしが赤木さんに早く会いたいだけなのだ。会いたいのを隠す口実に雪を、または雨を使ってしまおう。雪も雨も無くなってしまったら買い物を装おう。赤木さんは鋭いからなんでもお見通しだけどそれでも素直にいうのはなんだか悔しいのだ。傘立てを数秒眺めて手に取ったのは大きな黒いコウモリみたいな傘ひとつ。そんなに空模様は悪くない。だから、なんて邪な思いを胸に彼の働く工場まで転ばないように気をつけながら。
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