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 数ヶ月前からストーカーにあっていた。多分気のせいではなく、確実に。そのことを同じ大学のゼミの杉元くんに相談した事もあった。優しい彼はしばらく家に止めてくれた挙句、知人の家――いまは空き家らしい――を紹介してくれたりもした。
 異変に気付いたのはほんの最近のことだった。なんかつけられているな、程度の疑問がやがて確信に変わり、それに気づいてしまえばあとは簡単だった。気づくと家の中のものの位置が変わっていたり、郵便受けに自分の写真が入っていた事もあった。なんども非通知の電話が掛かってきて、怖くて怖くて夜中にコンビニに駆け込んだ事も少なくない。そのコンビニで偶然出会ったのが尾形さんだ。仕事帰りの彼は顔面蒼白でコンビニに駆け込んだわたしをみて「大丈夫か」と声をかけてくれた。やさしくて、ひくくて、どこか聞いたことのあるような落ち着いた声。ほ、と息を飲むと同時に限界がやってきたのだろう。わたしは出会って間もない彼につらつらとストーカーのことを打ち明けてしまった。彼は嫌な顔一つせず、話を聞いてくれてそれから助けになる、ともいってくれた。それにわたしは、じきに引っ越すことを伝えると彼は安心したように笑みを浮かべた。優しい顔だった。今考えれば、恋に落ちたのだと思う。

 引っ越しの日、これでストーカーに怯えることなく暮らせるとほっと息を吐いたわたしのお隣さんは尾形さんだった。知っている人がお隣でよかった、そう言って笑うと彼もまた「俺もまた会えて嬉しいよ」と笑った。
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