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13*

「しげ、しげるくん、冗談はだめだよ」
 鼻先が触れそうなくらい近いしげるくんの顔はぼやけてしまってよくわからないけれど、視界の先で彼がおかしそうに鼻を鳴らした。
「冗談じゃないよ。わかるでしょ」
「わから、ないよ、だってしげるくんはかわいくて、弟みたいで――っひゃ、ぁ」
 冗談じゃないと笑った彼はわたしの耳に息を吹きかけ、また笑う。わたしの反応を楽しむようにべろりと舐め、ぞくぞくとした何かが背中を駆け上った。直に鼓膜を揺らす水音にとんでもなくいやらしいことをしている気分になってしまって、わたしの口からは我慢しきれない吐息が小さく漏れ出してしまう。
「名前さん、いい加減気づきなよ。あんたの目の前にいる俺は弟でもなんでもない」
「でっ、でも、ぁっ……やめ、しげるくん、ひぅ」
「本当に嫌ならやめる。ねえ、」
 じっと見つめられて、ただでさえうるさかった鼓動がよけいに高く鳴り響く。そんな目で、そんな声で、そんな顔で言われてしまっては嫌だなんて言えないじゃないか。否、わたしも心の底では嫌なんかじゃないのだろう。それでも弟だからとか可愛いからだとかを体の良い言い訳にして逃げてきただけなのだ。
「や、じゃない……から、つづけて」
「ん、了解」
「しげ……んっ、ふ」
 塞がれた唇は一切の隙間なんかなくて、押し付けられて交わって、柔らかく熱く形を変えていくそれにぞわりと肌が粟だった。一瞬離れてまたくっついて。息が苦しくなって彼の胸を叩いて見ても離れてくれる気配なんかなくて、わたしは諦めたようにしげるくんのシャツを握る。
 ちゅ、とわざとらしく立てられた音にまた声が出て思わず目を閉じた。
「名前さん、口開けて」
「ふ、ぁ……っんぇ」
「ん……じょーず」
 しげるくんの方が年下なのに、わたしの頭をくしゃりと撫でる彼は年上の男性のような色気を醸し出していた。ぬるりと割って入ってきた舌を受け止めようにもやり方がわからず、縦横無尽に口内を這いずる舌にただ翻弄されるだけで、絶えず送り込まれる唾液の甘さに脳がくらりと揺れてしまう。
「ん、ぁ……っふ、ぅ」
「……ん、舌、出して」
「んぅ」
 言われるがままに舌を出せばにやりと笑った彼がわたしのそれを自分の口の中に招き入れる。腰にずくりと甘い痺れを走らせたキスに思わず太ももをすり寄せた。目ざとくそれを見逃さなかったしげるくんの雰囲気が楽しそうに笑い、わたしの体が傾いてそのままゆったりと押し倒される。
「しげ、るく……」
「名前さん、すごいいやらしい顔してる」
「いやらしい、の、きらい?」
「全然」
「よかった」
 ちらりと見えた鎖骨に小さく吸い付いて、薄っすら残った後を満足げに見つめる。なんとなく、所有印のようなそれはわたしの気持ちを満たして思わず声を出して笑ってしまった。
「意外。そういうのつけるんだ」
「うん。はじめてつけた」
「へえ、じゃあ俺も」
「あっ」
 外されたボタン、首筋をくすぐる白い髪。熱っぽい唇が押し当てられて、漏れ出した声を皮切りにしてわたしたちはゆっくりと溶けていった。
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