ここは私たち4人が治める国。
私たち4人はそれぞれ春・夏・秋・冬で国のトップとなり季節ごとに役目を果たしている。役割はその年、1年を無事に終わらせる為気候の変化などを操作すること。その年の作物が育つのも育たたないのも私たち次第と言う事になる。
私は冬を司る。
一応私たちには名前が付いていて私の親友である春の子は小春、夏の子は小春の彼氏の夏輝、秋は夏輝の親友の秋人。私は冬の冬華。
今日は小春の家でお茶を飲む約束をしていたので家に向かっている。
レンガ作りの家に着く。インターホンを鳴らし家主が出て来るのを待つ。
「はーい」と鈴のようなころころとしたソプラノの声で返事が返ってきた。
数秒待つとドアを開けてくれる。いつも目を細めにこにこと笑っている小春は私の姿を捉えるとぱっと表情を明るくして「いらっしゃい」と出迎えてくれた。

手土産のクッキーを渡していつもの様にリビングの椅子に座る。
椅子に座って待っていると蜂蜜入りのミルクティーを運んでくれた。
向側の席に小春が座る。さっそく私が持ってきたクッキーを美味しそうに口に運んでくれる。良かった。嬉しそうだ。

満足そうに小春を眺めミルクティーを飲んでいるとハッとしたように不安げな顔になり「実はね」と口を開いた。


「最近夏輝くんがね、返り血を浴びて帰って来るの」


のっけから「血」と言う重い単語が出て来た。吃驚して飲みかけていたミルクティーを吹き出しかけてしまった。


「え...?なに...?血?」
「うん、最初はねケガしてるのかなって思って、包帯を巻こうと思って除菌も兼ねて水で流したの。でもどこもケガしてなくて...気にしなくて良いからって誤魔化されちゃった。」


夏輝は目つきが悪く髪の色も金色と言う事もあり外見から判断されることも多く喧嘩っ早いところもある。けど大事なところでは冷静だし大事な小春に心配かけるような事はしない筈なんだけど。
――ただその彼女、「小春」の事となると途端に過保護になる。小春に手を出そうとする男、彼女に気がある男を小春に気が付かれないように見られ無い所に呼び出し、フルボッコで潰しにかかる中々にバイオレンスな一面がある。
まあ小春には知られたくない・知らせたくない・見せたくないという事で私も秋人も黙っている。なので夏輝時たま返り血を浴びて帰って来ると言う事は...。
つまりはそういう事なのだろう。


「夏輝くん、小さい頃からケガしてたり返り血が付いている事があったけどいつも教えてくれなかったから...。」

若干不満げに、弱々しくいつもの笑顔を崩している小春にただ私は渇いた笑顔を返すこと位しか出来ずにいた。――片想いをしていたころから彼はそうだったのだが。


「夏輝も変な所で恰好付けだからね、小春に心配かけたくないって言うのもあるかもしれないし。」
「ふふ...うん。そうだね、夏輝くんが言いたくない事を無理に聞き出したりするのも良く無いもんね。」


直ぐにいつもの笑顔を浮かべてくれた小春にほっと胸を撫でおろす。
夏輝のこと...教えた方がいいのかしら。彼はこの行動を異常だと自分で気が付いてはいる。彼曰く「小春が好き過ぎて止められない。」と真顔で言われ呆れた事は昨日のように鮮明に思い出すことが出来る。
好きだから小春に届くラブレターをポストから取りだし庭で「焼き芋」と称し燃やしていたり、好きだから小春に気がある男を呼び出し裏で潰す。好きだから小春の衣服、靴にGPS、盗聴器を付ける。
果たしてこれを過保護で終わらせていいのだろうか。幸せそうに笑う親友を目の前に何とも言う事が出来ず一息吐いて完全に冷め切ってしまったミルクティーを口に含んだ。



end.

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