カロン *** 渦の真ん中で回るため 片足立ちの不安定さと 片目を瞑る不器用さを 無理矢理に併せ持っていた すぐ足元で 散らかった思い出が泣いている 星の瞬きのような声を遺して ポニーテイルの後ろ姿が すう と燃え尽きてゆく 精一杯に音速を目指した ふらふらと回る 足元のものを蹴散らし 三半規管を麻痺させてまで 丁寧に心を燃やしてみたくて 輝きながら尽きてゆきたくて 誰かの思い出になりたくて 呼吸の傍ら、回り続ける 果たして倒れたなら ひとり分の祈りを懸命に背負ったまま どこへゆけるだろう どこかへゆけるだろうか ← |