くさり *** きり り、 まるで金星のよう 朽ちかけの止まり木が揺れる 凍えはじめた指先からは 赤く錆びたにおいがする 易しすぎた愛の言葉と 同じ数だけの約束たちを どうか どうか忘れまいと 雁字搦めにしたものだから なにも本当にならないまま 冷たさだけを模してしまった 縛ったつもりが縛られていた 私が恋した烏はもういない きり り、と小さく軋み 指先をひとつ甘噛みして 腐臭を振り払い飛び立った 喩えた星は皮肉にも 愛の女神なのだそうで いつか いつか出逢えたなら 赤く錆びた鎖を還そうと思う ← |