くさり

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きり り、

まるで金星のよう



朽ちかけの止まり木が揺れる
凍えはじめた指先からは
赤く錆びたにおいがする

易しすぎた愛の言葉と
同じ数だけの約束たちを
どうか どうか忘れまいと
雁字搦めにしたものだから
なにも本当にならないまま
冷たさだけを模してしまった

縛ったつもりが縛られていた



私が恋した烏はもういない

きり り、と小さく軋み
指先をひとつ甘噛みして
腐臭を振り払い飛び立った



喩えた星は皮肉にも
愛の女神なのだそうで
いつか いつか出逢えたなら
赤く錆びた鎖を還そうと思う