「名無しー?」
そう言って私に抱きついてくる男―沖田総司、現在高校2年生。彼とはかれこれもう17年の仲である。つまり、私と総司は幼なじみだ。付き合いだしたのはほんの二月前、私が当時の彼の彼女と喧嘩をしたのがきっかけだった。まぁ今はその話はいいとして。今、私は最大の悩みを抱えている。それは、
「ねぇ名無し、僕のこと好き?」
そう言うや否や、私の太ももを撫で回す総司。この変態男!と叫んでやりたいのだが、どうも彼の顔を見ると言葉が出てこない。惚れた弱みというやつだ。
「名無し聞いてる?僕のこと好き?」
首を傾げながらそう口にする彼。悔しいながらもその整った顔に見とれてしまう。
「…………」
「……名無し?」
私が黙っていればどうしたのか、と顔を覗かれる。それもそのはず、普段の私だったらすぐに総司の言う通りに好きだと答えてしまうから。そう、私の最大の悩み、それは総司に反抗できないことだ。昔はあのドSの総司に対抗できたものの、いざ総司を好きだと気づいてしまうと反抗のはの字すらできなくなってしまった。だから、今日こそは総司の言うなりにならずに彼の困った顔を拝むのだ。
「名無しわざと無視してるの?」
私の手首を掴み、少し不機嫌そうに、しかし悲しげに目を歪ませる総司。この顔に何度計画を取り止めたことか。しかし今日の私は違う。必ず総司の困った顔を、余裕がなくなった総司を拝むと決めたんだ。後戻りはできない。
「……ねぇ」
直も無視を続ける私にそろそろ総司もイラついてきたのだろう、手首を掴む力が強くなる。
「総司、手痛いんだけど」
私がいつもより低い声で痛いと言えば少し力を緩めたものの不機嫌そうに眉をしかめられた。
「なんなの?僕なんかした覚えないんだけど」
あからさまな私の態度に覚えがないと私を悲しそうに睨む総司。違う、私はそんな顔が見たいんじゃない。そんな悲しそうな目で見ないでほしい。
「ねぇ、なんか言ったらどうなの?さっから黙って…」
「総司」
今にもキレんばかりの彼の言葉を名前を呼んで制止させる。私だってやるときはやるんだ。いつも私ばっかり余裕がないみたいなのはもう嫌だから。今日ぐらいは余裕のない総司をみたい。「総司は本当に私のこと…んっ?!」
好きなの?、そう続くはずの口は総司のそれによって奪われた。いきなりのことに頭がついていかない。顔を背ければそれを許さんと彼に顎を固定される。どんどん激しくなってゆく行為は歯止めを知らない。まるで貪るような激しいキスに頭がぼうっとしてくる。
「…はっ、…んんっ…やめ…」
嫌だ、と総司の胸板を叩いてみるものの彼はまったくやめようとしない。それどころか両手首を片手で押さえ込み始めた。やばい、本気で怒らせた。そう気づいた時には既に時遅し、総司の手が私の服に侵入しはじめた。どうにかせねば、これはまずい。そう思って私はされてたまるかっと自由な足で総司を一蹴りする。
「……で、その態度はなんなの?」
蹴られたことでピタリと動きを止めた総司。ゆっくりと唇を離し、私の両手を掴んでいた手を自由にした。だが、このままでいくと完全に総司のペースに持っていかれる。なんとかしてこっちのペースにしなければ。
「総司は私のことすき?」
「……好きだよ」
いきなり何を言うんだ、と睨まれるもちゃんと答える総司。
「へぇ、じゃあこの子はなに?」
そう言って私の携帯にうつった総司と1年の女の子のツーショット写真を見せる。総司はそれを見て眉をしかめた。別にこの子と彼になにもやましいことがないのは知っている。
「僕の後輩だけど」
「知ってる」
じゃあ何が知りたいの?と呆れた顔をする総司。しかし私には総司に余裕をなくさせる方法がこの方法しか浮かばなかったからしかたない。しばらくして溜め息を吐いた総司。だめだ、このままだと私がただの重い女になってしまう。何か、何か方法を、
「何かよく知らないけどさ、誰かさんに途中で蹴られたお陰で、僕お預け状態なんだけど」
そろそろ限界だよ、そう言って私に触れようとする総司。その顔には普段の余裕なんてない。……うそ、計画達成しちゃった。私総司の余裕ない顔始めてみたかも。
「やったぁぁ!」
「え?あ…ちょっ」
嬉しさあまりに総司に抱きつく。勢いあまって総司を押し倒してしまったが今はそんなことを気にしてられない。
攻撃開始としようか
(計画達成!)
(計画?…へぇ、そんなもののために僕にあんな態度をとったんだ)
(まって!落ち着いて、これには訳があって…)
(聞こえないなぁ)
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な に こ れ (^q^)
なんでこんなふうになった。私は甘いのが書きたかっただけなんだ。うわーん、なにこのカオス(泣)
とりあえずお粗末さまでしたぁぁorz