そうです、私は嘘吐きです「私の名は雪村千鶴と申します。自分の立場をわきまえていないことは重々承知しておまります。聞くだけで構いません、どうか私の話を聞いてくださいませ」背筋を伸ばし、縛られた手を前につく。そしてしっかり目を合わせ、ゆっくりと頭を下げる。「お願い、致します」切羽詰まったように声を震えさせる。視界いっぱいに畳が映ったのと、男が息を飲んだのはほぼ同時だった。「改めまして、雪村千鶴です。先程はすいませんでした」軽く頭を下げて、改めて思う。さっき頭を下げたときもだが、手首を縛られているとどうもこの体制ではバランスがとりづらい。「いやいや、気にしないでくれ!ちょうど聞きたいことがあって君を呼びにいったところだったからな」なぁトシ、そう言って朗らかに笑う近藤の言葉に嘘はない。本当に私に聞きたいことがあったのだろう。何より、眉をしかめながら土方のついたため息が近藤の言葉を肯定していた。「何の話をしてんだ?近藤さんたち、こいつとなんかあったのか?」原田が私たちの会話に首を傾げる。「む?実は今さっきの話なんだが、俺とトシが雪村君を呼びにいったときに」そういってことの顛末を話始めた近藤に視線が集中した。「俺とトシが襖を開けたらな、彼が正座をして、話を聞いてくれ、と頭を下げてきたんだ。俺は驚いて頭をあげるように言ったんだが、『私の話を全て聞いていただくまでの間、私の命を保証をしてくださると約束してください。約束してくださるまで頭を上げません』と一点張りでな、あまりに切実な頼みだったのでな思わずわかったと約束してしまった!」「思わず、って…。近藤さんそりゃ甘すぎるだろ!」近藤の言葉に対し永倉が言っていることは正論だ。これから殺すかもしれない輩に情なんてただの足枷でしかないということを、近藤はわかっていない。いや、それを理解した上で、彼はそうしたのかもしれない。彼の、優しさ故に。だが、やはりみな私と同じことを思っているのだろう、ははは、と笑い話かのように話す彼とは反対に、他の男らの反応は微妙なものだった。まぁ、私にしてみれば彼のその優しさを考慮して行動したのだが。「君の話の全てって、話が終わるのにいったいどのくらい時間がかかるの?」( 27 / 41 )[ *prev|next# ] ←back -しおりを挟む-