07:真実を語るのも程々に




「山田、よかったら今日 弁当一緒に食べねえ?」

さわやかな笑顔ともに、そう自身の弁当箱をかがける野球少年を目の前にして、私の思考は一時機能を停止したー。

つい数分前 授業を終えたばかりのこの教室には、購買部に駆け込むため、はたまた別の場所で昼食をとるため、何人かの生徒はすぐここを出て行ったものの、半数近くの生徒はまだこの教室に残っているわけで…。驚いてる人、面白がっている人、ファンクラブ(ガチ勢)からの刺さるような視線が、私の全身に容赦なく突き刺さる。

どうする?どうするよ私。誘いにのる?断る?それとも無視か??いや最後のはダメだ。圧倒的多数を敵に回すことになる。よって答えはふたつにひとつ。しかし断るには何か適当な言い訳を探さなきゃならない。……くっ、まさかボッチ飯がこんなところで仇になろうとは!!
たまに昼食へ誘ってくれる笹川さんのほうへと目線を向ければ、彼女は既に、友人とのお喋りに夢中でまったくこちらに気づいてくれない。そのかわりにと、彼女の隣に座る黒川が ニヤニヤとしながら私のほうへと手を仰いだ。……行ってこいってか!

「もしかして、もう他の奴と約束してたか?」

気まずそうに頬をかく山本の姿に、一部からの視線がさらに痛くなる。これ、どっち選んでもハズレなんじゃないか??


――――――
―――




「おせーぞ」
「やっぱりあなたの差し金か」

んなことだろうと思ったよ!
山本に連れられ屋上へと向かえば、そこには沢田、獄寺、小鳥遊さん、そしてリボーンくんがちゃっかりと座って待っていた。周りの反応を見るに、どうやら私が来ることは知らされていなかったようだ。ジト目で彼のほうをみれば、彼はニヤッといつもの調子で笑みを浮かべた。

「山本に誘ってもらえて良かったな。どーせ今日も、一人寂しく食う予定だったんだろ?」
「……決めつけるのよくない」
「ハナコ、友達いねーもんな」
「余計なお世話です!」

軽口をたたくようなやり取りに、3人がさらに驚いた顔をする。
まったくこの赤ん坊は…。人の事情をわかっていて こういう手段をとるのだから、本当にたちが悪い。それと私は、自分の意志でそうしている・・・・・・わけであって、別に親しくできる友人がいないとかそういうわけじゃ……ってその憐れむような目 やめて。

「どうして花子ちゃんがここに…?」
「どうしてって…。さっきも言ってた通り、山本に弁当一緒にどうだって誘われて…。隣座っていい?」
「へ!?あっ……う、ん」

一応そういうてい・・でここにいるので小鳥遊さんにそう答えれば、続いて「大人数で食べたほうが楽しいだろ?」なんて山本が私の左隣りへと座った。ニカッと何の悪意もなく笑う彼に気圧されてか、彼女はぎこちなく頷く。やっぱ天然つえぇ。実行犯に選ばれるだけはある。

「ごめん、やっぱり迷惑だった?」

それならそれで、私はこの場所から逃げられる理由ができるから嬉しいのだが…。覗き込むようにそう聞けば、彼女は慌てたように両手を振るう。

「ち、がうよ!全然迷惑だなんて思ってなくて!!ただ…。」
「ただ?」
「……ううん、何でもない。…大丈夫。大丈夫、だから……」

その言葉は、返事とも独り言ともとれるほどの小さな声で。何かを考えるかのようにうつむいた彼女は、以前と同じように自身の胸元を軽く握った。おそらくこの仕草は、彼女が何か不安に思ったときにしてしまうなのだろう。

「そう…。まぁでも、突然押しかけちゃったことには変わりないし…」

お詫びってわけじゃないけど。そう言って、常備しているチョコレートを何個か取り出し、彼女の手のひらへと乗せる。せめて小鳥遊さんが普段のトーンで話せるくらいには、この気まずい雰囲気を和らげたい。おまけとばかりに飴玉もひとつ追加すれば、彼女は気を取り直すかのように笑ってみせた。

「あっ、これどんぐり飴!なつかしい〜」
「なつかしい……?」
「うん!小学生のころ、学校の帰りに駄菓子屋さんでよく買ってたんだ。容器いっぱいに入ってるやつ。ふふ、なつかしいなぁ」
「……。そうなんだ…。でも今、駄菓子屋さんってなかなか見ないよね。この辺でまだ残ってるお店ってどこだっけ?」
「あそこじゃねーか?ほら、黒曜中の方の」
「わっ、あるの?ねぇねぇ、今度みんなでいこーよ!ランボくんもつれてさあ!」
「いいなそれ!山田もくるだろ?」
「んー…、そのランボくんってだれ?」
「ランボ?あいつはなんていうか…」
「人に迷惑かけることしかできねぇアホガキのことだ」
「もう!また隼人はそういう言い方するー!」

わいわいと盛り上がり始めた会話の輪からそっと抜け、黙々とお弁当食べ始める。昼休みが終わるまであと25分。先は長い。


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