「聞ーちゃった、聞ーちゃった♪」
「……なに、どうかしたの?」

2時間目終了後、クラスメイトの黒川に声をかけられた。隣にはその友人、笹川さんも一緒だ。2人は本当に仲がいい。加えて目の保養になる。黒川は大人っぽくて話がしやすいし、笹川さんは何といっても癒し。今朝の出来事で荒んだ私の心を綺麗に浄化してくれる。マイナスイオンすごい。特別親しくしている訳ではないが、クラスでは割とお話をする2人組である。

「隣のクラスの奴に聞いたんだけど…。山田、今日の朝 獄寺と手ぇ繋いでたんだって?」
「は??」

誰だそんな噂ながしてんの。脳内お花畑か。ちょっと表出ろや。むすっとした様に否定をすれば、黒川は少しガッカリとした様子で肩を落とした。彼女はこの手の話が大好きなのだ。

「なーんだ、でまかせなの?せっかくあんたの面白い話題が出てきたと思ったのに」
「奴とはどうあってもありえないよ」
「随分はっきり否定するわね」

手のひらについた赤い痕をぼんやりとみつめながら、今朝の出来事を思い出す。あれで少しは落ち着いてくれればいいのだけれど…。まあ無理だろうなぁ。今後も絡まれ続けたらどうしよう。ついついあんなこと言ってしまったけど、考えて行動するのは私の方だったな。反省はしている。後悔はしていないけど。

「腕はもう大丈夫なの?」
「んー、まだ少し痛むけど…。この通り、笹川さんの頭を撫でられるくらいには治ってるから安心して」
「あんたねぇ…。」

心配そうな顔で腕を見ていた笹川さんを元気づけるようにポンポンと撫でれば、彼女はクスクスと笑みをこぼした。うん、やっぱり彼女には笑顔が一番だ。

「…笹川さん」
「ん?なぁに?」
「…、いや。…あ、そういえば例のお店のフロマージュタルト、食べたよ。すごいおいしかった」
「でしょう!私もあれ、すっごく好きなの!ケーキ以外のね、シュークリームとかパンナコッタなんかもおいしいんだよ!」
「京子、1日に3つは食べてるもんね」
「ま、毎日は食べてないったら!!」

カァアと頬を染めて恥ずかしそうに怒る彼女は、どこまでも可憐な少女だ。この子に涙は似合わない。悲しませちゃいけない。わかっている。わかってはいるのに―。

じわじわと胸に広がる罪の意識に、呼吸が少し苦しくなる。馬鹿だなぁ…。私は、悲劇のヒロインなんかじゃあないというのに。


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