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根津に代わり、新たに振り当てられた理科教師が、黒板に淡々と文字を写していく。
ったく。なんなんだこのくそつまんねー授業は。どれも教科書みりゃわかる話じゃねーか。
わざわざノートに書くのも馬鹿らしくなる内容に、持ったばかりのペンを手持ち無沙汰に遊ばせた。

「えーっとじゃあ教科書の42ページを……、山田さん、頭から読んでってもらえる?」

センコーに名前を呼ばれた女が、教科書を手に取り 気怠そうに立ち上がる。…俺よりも遅刻して来た奴か。てかなんであいつ靴下履いてねぇんだよ。
一瞬そんな疑問が浮かんだが、すぐにどうでもいいかと頭から消えた。

「それ以上分けることのできない最小の粒子を原子といい、原子は―……」

単調に読み進めていくその声をバックに、クラスの何人かが居眠りをし始める。自分もそうしようかと考えたが、妙に眼が冴えてしまっていて とてもそんな気分にもなれない。
あーあ、特にやることもねーし、10代目とも席が離れてるしよ。

「これらの元素あるいは原子を記号化した元素記号は、化学式や化学反応式で用いられ―…」

待てよ。記号化か……。これは良いアイデアかもしれねぇ。
ノートを開き、改めてペンを握りなおす。

「(とりあえず五十音書いてそっからデザインを……。いや、その前にこれをなんて呼ぶかだな)」

女の朗読が終わる。そいつが一体どんな奴かなんて、この頃の俺にはどうでもよかった。

「(ゴクデラ文字……、略してG文字と命名することにしよう!)」


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