指と喉
「治んねーな、これ」
「え?何?」
「指。皮剥けまくりじゃん」
「あぁー…、弦弾くからね。気付いてたんだ?」
「当たり前。うわー…かてぇ」
「レックん時は手袋してんだけどねー」
敏弥さんとヤッた後、お互い裸のままベッドん中でくっつく。
敏弥さんの手が、俺の髪を撫でてる右手を取って、敏弥さんの指を見る。
敏弥さんの右手人差し指はベースの弦弾いてるから、ずっと皮が剥けたまま。
でも皮膚が固くなってる。
そこを指の腹で撫でると、少しザラザラした感触。
プレイスタイル変えて、敏弥さんが頑張ってるって証拠だから、超好き。
この指。
もうずっとこのままで、治った時を見た事はねーけど。
「つーか、人の指の皮って何重にも重なって出来てんだなー」
「人の指で何観察してんだよ」
「やーこれ剥いてったら骨見えんのかな、とか?」
「やだよ」
じっと敏弥さんの指を見ながら、親指の爪でカリカリと皮を軽く引っ掻くと間近にいた敏弥さんの顔がふにゃっと笑って俺の手から指を取り上げた。
残念。
だから、その手を追い掛けてまた捕まえた。
指と指を絡めて、重なる手。
タッパの差があるから仕方無いとは言え、敏弥さんの方が掌もデカいし指も長い。
ちょっと悔しい。
でも綺麗な指。
そしてエロい。
「大丈夫、抉れて骨が見えても敏弥さんなら弾ける」
「それは潔くピック弾きにするよ」
「そっかー、残念。敏弥さんの指で弾く手、好きなんだけどな」
「じゃこれ以上剥かないでね」
「痛い?」
「もう今は全然痛く無いよ。見た目は痛そうだけど」
「あれだけ弾いてりゃなー」
「ルキ君だって。歌録りとかツアー期間中とか、声掠れてんじゃんね。気を付けて」
「それはケアするしかねーもんなー」
「でも前みたいに声出なくなったりしたらね。心配するから」
「大丈夫。あん時は敏弥さんが居てくれたから」
自分1人だったら深刻に考えてただろうね。
何も言わず、傍にいてくれた恋人がいたから。
だから敏弥さんが肉抉れて弾け無くなっても、どうにかしてやるから。
間近に見える敏弥さんの顔。
視線が絡んだまま右手が俺の頬から唇をなぞって、喉元に指が滑る。
「でも声が出なくなったら、ずっと俺の傍にいてくれる?」
「敏弥さんが弾けなくなったら、俺の傍にずっといるならいいよ」
そう言うと、喉に少し、敏弥さんの親指が食い込む。
敏弥さんの、そう言う狂気的に俺を好きな所が好き。
セフレん時はいつでも辞めていいよってスタンスだった癖に、一度好きになったら絶対手放そうとしない。
お互いそうだから、遠慮無く相手を好きになれる。
似た者同士、相性いいじゃんね。
狂った愛し方でも、お互いが満足出来ればそれでいい。
「……ッ、苦しいってのバカ」
「あはは」
ちょっと苦しくなって来たから、俺の喉を絞める敏弥さんの手首を掴む。
笑って俺を見つめる敏弥さんの手を引き寄せて、そのま剥けて皮膚が固くなった人差し指にゆっくりと舌を這わせる。
ざらついた舌の感触。
舐め回す指を少し口に含んで、指を甘噛む。
じっと敏弥さんと視線を絡めてから、目を伏せる様に下へと流す。
「…ッん、」
敏弥さんの指を舐め回してると、口の中の指が動いて。
上顎をその指で撫でられて思わず声が出た。
気持ち悪い、けどそこが気持ちイイ。
俺は粘膜が弱いらしい。
フェラん時、無理矢理突かれんのとか好き。
ネコの時はね。
「ヤラしー顔」
「…っふ…」
口元だけで笑う敏弥さんが、俺の口内を指で撫でながら身体を起こして俺に覆い被さって来た。
そして喉元に吸い付かれる。
敏弥さんの指を噛む。
お互い失ったら困るもの。
けど、無くしたらお互いを自分の物に出来る物。
そんな妄想をして確かめて満足する。
俺の身体を弄るコイツの手も、コイツを誘う俺の声も無くてはならない物だけど。
敏弥さんの首に両腕を回して、髪を掻き乱しながらその手から享受する快感に身を委ねた。
END
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