基本はバカップル



仕事にようやく区切りがついて、帰り飯食って帰るかーってメンバー各々が喋ってる時。
自分の携帯が鳴った。

ディスプレイを見ると『敏弥』の文字。


「はい」
『ルッキくーん。今何してんの?』
「今仕事終わって帰ろうとした所だけど」
『じゃー○○ってホテルのビアガーデン来てよ』
「はぁ?何、飲んでんの?」
『薫君と堕威君もいるからねー。じゃ、早く来てね!』
「オイ、」


一方的に電話を切られて溜め息。

ビアガーデンね。

あれってビール飲み放題とかそんなトコじゃん。

敏弥さん達はいいかもしんねーけど、俺そんな飲まねーし。


つーか今日は敏弥さんが晩飯当番だっただろ。


でも薫さんと堕威さんいるっつーから行こ。
何回か会った事あるけど、また話したいし。


携帯をポケットん中に突っ込んで、サングラスを掛けて鞄を持つ。
メンバーやスタッフにお疲れーと挨拶をして、スタジオを出て行った。












タクシーに乗って言われたホテルに到着。
ビアガーデンは最上階らしく、エレベーターに乗って上まで行く。

そしたら予想以上に人だらけ。
しかも皆アルコール入ってるからか煩ぇ。
ま、騒ぐ為に飲むんだろうけど。


携帯を取り出して敏弥さんにコール。


『はーい』
「着いた。敏弥さん何処?」
『待って待って。今迎えに行くから。入り口にいるー?』
「うん」
『えーと、ルキ君ルキ君…、あ、いた』
「おー」
『こっちこっち』


携帯を持って手を振る馬鹿デカい敏弥さん。
もう結構飲んでんのか機嫌良さそうにニコニコしながら、俺の腕を引いて席を掻き分けて歩いてく。

そしたら、薫さんと堕威さんらしき人がテーブル囲んで座ってて。

敏弥さんに肩を抱かれてその前に引っ張り出される。


「じゃーん、ルキ君でーす」
「こんばんは」
「おーよう来たなぁ」
「まぁ座り。ルキ君も飲むやろ?今日は奢ったるでー」
「いえ、そんな」


挨拶をしながら軽く会釈をして。
敏弥さんが座る隣へと腰を下ろす。

薫さんと堕威さんも、結構飲んでるらしくて。
メニューを見ずに店員を呼んで、生ビールを4つ頼んだ。


「突然御免なぁ、呼び出して。敏弥がルキ君呼ぶーって煩かったんよ」
「いえ、全然。久々に薫さん達とお話出来るいい機会なので」
「ちょっとちょっと。俺はぁ?」
「敏弥さんは帰ってからでも話出来んだろ。つーか何、どんだけ飲んだワケ?」
「知らねー。あ、ビール来た」
「はぁ」


テーブルの上に並べられた、お世辞にもディナーには程遠いつまみ系の食べ物を見回して。
空いたジョッキグラスをテーブルの端に片付ける。

新しく運ばれて来たジョッキがテーブルに並べられて、店員さんが空いたヤツを持ってった。


「はい、ルキ君もグラス持って。カンパーイ」
「乾杯」


テンション高い敏弥さんがグラスを持ち上げて、それに続いて皆で乾杯。

軽快にグラスが鳴る音が響いて、一口。
生ビールは苦手だけど少しぐらいは飲めるから。

冷えたビールが美味い。
一杯目だけな。


「ルキ君、腹減っとらん?つまみ系のしか無いけど何でも食いやー」
「あ、有難う御座居ます」


薫さんからメニュー表を受け取って、メニューに目を通す。

揚げ物系が多いな。

あ、軟骨の唐揚げ食べたい。


店員を捕まえて、軟骨の唐揚げとたこわさ、敏弥さんが食いたいっつっただし巻き玉子を頼む。

ちびちびビールを飲みながら4人で談笑。


「敏弥と長いんやんなぁ?もうどのくらいなん?」
「えー…と、どんくらい?」
「わっかんねー。4、5年?」
「へー敏弥さん忘れたんだ。じゃ、記念日も覚えてねーの?最悪」
「嘘うそ!覚えてるって!ちゃんと付き合い始めたのは2006年の4月1日!」
「…だ、そうです。だから5年ぐらいですね」


質問した堕威さんの方へと顔を向け、にっこりと笑う。
実際、セフレ期間も長かったから、敏弥さんとの付き合いは相当長い。


「ははっ、敏弥尻に敷かれとん?」
「そんな事ねーよ」
「あ、俺もちゃんと敏弥さんの事好きなんで、大丈夫です」
「大丈夫って何やのそれー」


楽しそうに笑う薫さんと堕威さん。

敏弥さんはグイグイとビールを煽って。


飲み過ぎて帰れねーっつったら放って帰んぞ。


「ってか聞いてよー。ルキ君て部屋でいる時ずーっと俺らのアルバム流してんの!買って来てから」
「いいだろ聴きてーんだから」
「起き抜けにだよ。朝から煩いよ」
「敏弥さん寝起き最悪なんだから、ちょうどいいじゃん」
「あー…ま、聴いてくれとんは嬉しいけどなぁ」
「もうすっげ良かったです」


それから、音楽の話になって。
やっぱ先輩と話出来んのは俺には刺激になるし、勉強になる。

敏弥さんとも音楽の話はするけど、やっぱ色んな意見も聞きたいし。

ビアガーデンて場所柄、結構なハイペースでビールを飲んだりつまみを食べたり。
閉店まで4人で盛り上がった。











「ルキ君達もタクシー?」
「あ、はい。今日はご馳走様でした」
「いやいや、こっちも突然呼び出してすまんな」
「いえ、色々な話聞けて勉強になりました。またライブにもお邪魔させて頂きます」
「ん。ほなまたな。敏弥いけるかー?」
「だーいじょーぶ」
「敏弥さん飲み過ぎ。自分で歩けよ」
「わかってるってー。ルキ君小さいから俺支えらんねーし。ねー」
「うーわ、放って帰りてぇ」


酔ってテンションが高い敏弥さんはフラフラ。
やっぱ飲み過ぎだろ。

タクシー乗り場で、薫さんと堕威さんに挨拶をして別れる。


敏弥さんと一番前のタクシーに乗り込んで。


運転手に行き先を告げて。
溜め息を吐いてシートに身体を預けた。

今日は俺も調子乗って飲んだから、ふわふわする。

アルコール臭ぇ。


したら隣に座る敏弥さんの手が、俺の右手に重ねられた。

から、持ち直して指を絡め繋ぐ。


運転手からは別に見えねーだろ。


チラッと敏弥さんの方を見ると、口に笑みを浮かべながら窓の外を眺めてて。


時々、流れる明かりに照らされる敏弥さんの横顔は、綺麗。


キスしてぇな。

お互い酒くせーだろうけど。


「…なーに、ルキ君」
「別にー?早く着かねーかなって。眠い」


ラブラブも出来ないしね?


敏弥さんの顔が近付いて来て、耳元でそう囁かれる。

よくわかってんじゃん。


敏弥さんのメンバーさんと飲むのは好き。
やっぱ、男同士気軽に紹介出来る関係じゃねーから。

認めて貰えてるようで。


でも、やっぱ2人きりの方がいいな。


きゅっと敏弥さんの手を強く握った。



END


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