手料理/敏京



『京君ごめん…オムライス失敗しちゃった…』
『うわ、何これ。オムライスのつもりなん?』
『焦げ…ました』
『めっちゃ不味そう』
『…初めて作ったんだもん!本見て作ったけど…あぁあぁあー!食べないで!どっか食べに行こうよ京君!』
『うっわ、ゲロ不味』
『……失敗しちゃった、から…ごめん』
『糞が。こんなモン食わすなや僕に』
『………』
『お前ホンマ料理出来んのやな。このクズ』
『……あの、貶しながら食ってんじゃん、か…』
『あぁ?食べる食べんは僕の勝手や死ね』
『……』
『ニヤつくなキショい』











なーんて事があったなぁ、とか思いながら、キッチンに立って今日の晩ご飯を作る。

京君が好きな、オムライス。

昔は沢山失敗したけど、今では完璧に作れる様になった。

京君が好きな料理だから、一番最初に覚えたくて何回も作って練習して。
失敗する度に京君は悪態吐きながら全部食べてくれて。

嬉しかったのを、今でも覚えてる。


「…オイ敏弥。何ニヤニヤしながら料理しとんキショいわ」
「あ、京君どうしたの?」
「別に」
「やー何か昔を思い出して、ね」
「ね、って。まーたビール飲みながら作っとんかい」
「うん、だって飲みたいんだもん」
「あー、やっぱビールサーバーなんか許可するんや無かったわ…」
「立派なキッチンドランカーです!」
「威張って言うなアホ」


料理を作ってる近くにある、ビールグラスを見つけて眉を寄せる京君。


最近買ったんだよね、ビールサーバー。

やー、だって家でも生ビール飲みたいな〜って。
そう思って京君に買っていい?って言ったら、好きにしたら?って言われたんだもん。


料理しながら飲むビールも美味しいよー。

京君は一口、二口しか飲まないけど、ちょっと飲む様になったしね。


「お前味付けにビール入れんなや」
「さすがにしないよー。そんな事」
「ならえぇけど。早よしてや腹減ってん」
「うん、もうすぐ出来るから、待っててね」
「ん。…うわ、酒くさッ」
「ビール飲んでるもーん」


京君の方に向き直って、身を屈めてキスすると、顔を歪めて半歩下がる。

そんな京君に笑って、踵を返してテレビのある部屋へと戻ってく京君。

何しに来たんだろ。
見に来ただけ?

可愛いなぁ。























「京君、出来たよ」
「んー」
「今日のご飯はオムライスとサラダです」
「おー、美味そうやん」
「でしょー?」
「うわ、またビール飲むんか」
「うん」
「オムライスと一緒に?」
「水代わりだよ」
「好きやなお前も」


広い部屋で、ソファに座ってテレビを見てた京君に声をかけると、ゆっくりとこっちへ向かって来る。


テーブルに2人分のご飯並べて。
2人で向かい合って手を合わせて、いただきます。


「……昔ってなぁ」
「ん?」
「敏弥むっちゃ料理下手やったよな」
「あー…、だってちゃんと作った事なんてねぇし」
「不味い料理何日も続いてな」
「…うん、ね。上手くいかないモンだったよね」
「苛めかと思ったわ」
「でも京君毎回全部食べてくれたじゃんね」
「腹減っとってん」
「うん、ありがと。めちゃくちゃ嬉しかったよ」
「当たり前やろ」


文句言いながらも全部食べてくれる京君だったから。
これは上手くならなきゃなって思ったんだけどね。

京君なりの優しさが、嬉しかったから。


2人で、作ったオムライスをつつく。

もう昔とは違う、見た目も味も良くなったけど、京君を想って愛情は今もたっぷり入れてるからね。


「ね、今日の美味い?」
「ん。えぇんとちゃう」
「よかった」
「敏弥が作るんやったら、何でもえぇよ」
「…今日素直な事言ってんね?」
「ほうか。いつも素直やん」
「京君なりのね」


それが一番、愛しい事だけど。


ビールを飲みながら京君を見て。
もう文句を言う事も無くなって、いつもの様に皿の上の料理が食べられてくのに、笑みを浮かべた。




20091105


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