Gratis love/玲流
個人撮りが押しに押して。
これ最後のヤツ何時に帰れんだよって思ってたら俺が最後で。
完璧終わったわーとか思いながらパソコンで作業しながら他のメンバーが撮り終わるのを待つ。
ま、深夜跨ぐからと言って生半可な写真じゃ嫌なんで、存分に時間使ってくれて構わないんだけど。
最初の方に終わったれいたの個人カットをチェックしつつ、珈琲を飲んで眠気を誤魔化す。
「ルキ何時に終わんの」
「わっかんね」
「待ってよっか」
「は?お前が帰んなきゃ誰がコロンの相手するんだよ。終わったなら帰れコロンと寝ろ」
「はいはい。あんま無理すんなよ」
「んー。平気」
衣装も着替えて、メイクを落としたれいたがスタッフやメンバーに挨拶して帰宅。
コロンの飯は自動タイマーで出て来る様になってっけど、やっぱずっと部屋に1匹だけっつーのもな。
連日撮影やらインタビューやら続いてるし、れいたも疲れてるだろうから俺の撮影終わるまで待つよりも、帰って寝て欲しい。
…でもそう言ういつまでも青臭い恋愛やってんのも好きだけどね。
「お疲れ様でしたー」
結局俺の撮影が一番最後で。
ま、撮影中は色々表に出せねー様な禁断トークで楽しかったんだけとね。
でも気張って神経使ってたから、何か一気に疲れたかも。
身体は疲れてんのに、神経は研ぎ澄まされた様に冴えてる感じ。
まぁ、いい写真撮れたし、それが満足。
写真もチェックし終わって着替えて、もう夜中だしマネージャーが送ってくれるって事で車回して来るから表で待ってろ言われて外へ出る。
昼間は暖かいけど、下手したら早朝に差し掛かりそう一歩手前な時間は少し肌寒い。
ちょっとだけ肩をすくめて、iPhoneを見てから周りを見渡す。
そしたら、いきなりクラクションが鳴ってその方向を見た。
目を凝らすと見慣れた車。
運転席側から、降りて来る。
れいた。
…と、その腕の中にはコロン。
「ルキー。お疲れ」
「…お前、何してんだよ」
「迎えに来た。コロンがルキがいなきゃ嫌って言うからさ」
「……」
れいたの車に近づくと、腕の中にいたコロンが思い切り尻尾を振って俺に向かって来ようとするから、れいたの腕から抱き上げる。
コロンにはきっちり服が着せてあった。
「お前…どのぐらい待ってたんだよ」
「んー。実質はそんなに。ルキのツイッター見て来たからさ。コロンもいたから時間なんてあっと言う間だったし」
なー?コロンー?とか言いながら笑って、帰った時と同じ服装のれいた。
コロンの暖かさと同時に、胸の中に言い様の無い感情が込み上げる。
平たく言えば、嬉しい、だけど、それ以上。
「…馬鹿なの?寝てろよ」
「コロンが昼寝してっから寝ねーんだよ。ま、俺もルキいねーのに寝る気しねーし」
「…寂しがり屋ですねー、れいちゃんは」
「そー。だからさっさと帰って寝ようぜ、疲れただろ。乗れよ」
「ん。ちょっと待って、マネに連絡するわ」
「おぅ」
俺が可愛くねー事言っても、れいたは目を細めて笑ってワックスでガチガチの俺の頭をぽんぽんと叩いた。
コロンを片手にiPhoneでマネに送りがいらない旨を伝えて、れいたの車の助手席に乗り込む。
外とは違う、少し暖かい空気。
シートに沈み込む身体。
腕の中のコロンは、懸命に俺の顎を舐めてた。
コロンの毛並みを撫でながら、発進させた車の慣れた心地よい振動に目を閉じる。
「腹減ってね?コロンいるから店寄れねーけど、コンビニかどっかで何か買う?」
「んー…いらね」
「そっか。まだ着かねーから、寝とけ」
「…うん」
れいたの手が、乱暴に、でも優しい手付きで俺の頭を撫でて。
コロンも腕の中に収まって、暖かい。
うっすら目を開けると窓に映る自分の疲れた顔と、都会の夜景。
さっきまでの感情が嘘の様に流されて。
あぁ、ホント。
好きだなぁって思う。
我儘な俺の言う事、ほとんど笑って聞いてくれて。
今日もさりげに嬉しい事しちゃってるし。
俺越しに映る、運転中のれいたの横顔。
溶かされていく神経。
俺はホント、こいつには敵わないと思う。
コロンの頭を撫でながら。
与えてくれる心地よさに、意識をふっと途切れさせた。
終
20120614
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