彼の手で磨き上げるモノ/玲流




久々のオフだからって、寝過ごした俺が起きたられいたの姿は無くて。
まとわり付いて来たコロンを抱き上げて欠伸を噛み殺しながらリビングに行くと、1枚の置き手紙。

コロンの散歩とご飯は済んでるって事と、下にいる、とだけ書かれたメモ。

律儀な彼にちょっと笑いながら、珈琲サイフォンに入ったままの珈琲を淹れて。
着替えてコロンと一緒に部屋で遊んでたんだけど。


いくら待ってもれいたが帰って来ねーから、コロンと下に降りる。
起きるのが遅かったから日も陰りかけだし散歩行けるかなーって思ってハーネスとリードもつけて。


「あ、ルキ起きた?はよ」
「とっくに起きてたっつーの。え、1日中ここに居たの?もう夕方だけど」
「マジ?」
「うん」
「そっかー」
「……」


いやね、れいたが車とバイク好きなのは知ってるよ。
俺は後ろ乗ったり、助手席乗る専門だけど。

今の車やバイクも拘りに拘り抜いて出来たヤツだし。
俺はそこまで車とか詳しくねーから、わかんねーけど、格好良いなって思うよ。


俺らの住んでるマンションには駐車場もあるし、結構広い。


別にオフの日だから何処行くとか約束はしてねーけど。
暫くイジって無かったからって1日中、車に付きっきりってのはどうよ。


車の周りに洗った様な水溜まりがある。

何してんの今。
ワックス?
随分ピカピカになってんね。


れいたの傍で何となくコロンを抱っこしたまま座り込んで、じっと眺める。


でもコロンが下ろしてって風に腕から抜け出そうとするから、地面に下ろしてやる。
尻尾振りながら、れいたの方に近寄ってった。

まぁリードの長さがあるし、泡だらけな水溜まりもあるからそんな近寄れねーんだけど。


「れいた」
「んー?」
「いつ終わんの」
「もうちょっと」
「俺腹減ったんだけどー」
「何も食ってねーの」
「珈琲だけ」
「お前…身体に悪いだろ」
「めんどくさい」
「仕方ねーなぁ」


そう言ってこっちを向いて笑ったれいた。

好きな事してるれいたは格好良いけどね、確かに。

車やバイクいじってる時とか。
ベース弾いてる時とか。


丁寧に乗ってるから、車は今も綺麗だし。


同じ場所にヤンキー座りで座り込む俺にリードを握られてるから、コロンの行動範囲は広くなく。
周りをうろうろしながら匂いを嗅いでるからまた抱き寄せる。

顎の下を撫でながら、れいたの背中に声を掛ける。


「…何か、長年同じ車乗ってるヤツは一途で、コロコロ替えるヤツは浮気性ってどっかで読んだんだけど」
「そりゃー俺は一途ですから?」
「ホントかよ」
「マジだろ。まぁ車を恋人に例えんなら、すっげー愛しまくってっからね。超大事」
「どっちが」
「恋人」
「ならその恋人が腹減ったって餓えてんだけどー」
「はは、これ終わったらどっか食べに行く?」
「コロンいるし」
「じゃ、スーパー行くか」
「ん」


まぁ、俺は機械の塊じゃねーけど。
れいたに大事にされてんのはわかってっけどね。


俺の本質がこうで、れいたに受け入れられてんのか。
れいたが大事にするから、俺がこうなったのか。

どっちだろうね。

どっちでもいいけど。


「ちょっとコロン散歩して来る」
「おー。あんま遠くに行くなよ」
「ガキかよ」


立ち上がってコロンを地面に下ろす。
スーパーは車で行くけど、コロンがいると大概れいたはコロンと車ん中で留守番だし。

今の内に歩かせておこう。


「あ、財布持って来てねーから終わったられいちゃん取って来てね」
「マジかよ」
「うん」


じゃー後でねってコロンといつもの散歩コースを歩く。
ちまちま歩くし超匂ってるからなかなか進まないんだけど。


基本俺に甘いれいたは、きっちり財布も取って来てくれて。
綺麗になった車で待っててくれるんだろうな。


一途に大事にしてね。
機械の塊じゃなくて。




20120911



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