恋人目線の欲目/鬼歌



淳くんは、本人もバンギャルって公言してる程ヴィジュアル系が好きなの知ってるし。
バンドが大きくなるにつれて、好きって言ってる人と知り合いになれて淳くんのテンションは半端無いぐらい上がってたのを見てるから、よかったねって思うだけでどうこう言うつもりは無いんだけどね。


「淳くん、色んな人とご飯行ってるね」


って。

僕の部屋で、散らかったテーブルの上でパソコンを見つつ。
何気なしに、僕の家に来て煎餅布団の上に寝転がってポテチをパリパリ食べながら(マネージャーが居たら太るって取り上げられるだろうね)新しく買ったV系雑誌を読んでた淳くんに言った。


別に嫌味のつもりで言ってた訳では無いんだけど、淳くんはバッと起き上がって不安そうな顔をした。
から、ちょっと驚く。


「え、鬼龍院さんそう言うのヤだ?僕浮気とかしてないし、イケメンイケメン言っちゃってるし寂しいから引き止めたりちょっとペアの物付けちゃったりしてるけど他意は無いって言うか…でも鬼龍院さんが嫌ならやめるから捨てないでヤだ僕鬼龍院さんに捨てられたら生きて行けない」
「えぇっ、どうしたの淳くん、そんな嫌とか思ってないから、」


ちょっと食い気味に淳くんが僕に近寄って来て、泣きそうな顔で早口で捲し立てられた。
そんな淳くんにちょっとビックリして、両手で待ってって、ジェスチャーをしながら淳くんを宥める。


「ホント?ホントに?僕、他の人とご飯食べに行っても大丈夫?」
「全然いいよ。って言うか、ツイッターでもわかるし、淳くん僕に行くって言ってるじゃない」
「それは、そうだけど…それで鬼龍院さんに嫌われるなら行かない」
「……」


じっと僕の目を見つめて言い切る淳くん。

嬉しそうに知り合ったバンドマンさんとご飯に行く事になったって報告して来る淳くんには、良かったねって思うし。
そんな楽しみを奪う権利は僕には無いと思ってる。


本当に浮気されてたらショックだし病むけど、下心無いよってアピールで淳くんなりにツイッターや口頭で報告してるのかなって勝手に理解してるんだけどな。


「嫌わないよ。他のバンドマンさんとの交流だって大事でしょ。そんな深い意味で言ったんじゃないから…、何か、ごめん」
「んーん、鬼龍院さんは悪く無いから謝らないでよ。でもホント、浮気とかじゃないから…はしゃいじゃってるけど…」
「あぁー。まぁ僕もそうだし、ずーっと好き好き言ってた人と連絡取り合える様になって良かったじゃない」
「……うん」
「え?やなの?」
「…嬉しい、けど。全部鬼龍院さんのおかげだし…」
「それは淳くんが言い続けたから叶ったんだよ」


俯く淳くんに言うと、唇を噛みながら頷いた。
そんな正座までして、僕は怒ってる訳じゃないんだけどなって苦笑い。

でもちょっと、僕の事でそこまで落ち込んでる淳くんはちょっと可愛いと思ってしまった。
あんまり幸せな恋人関係を結んで来なかった僕は、こんな時の淳くんの言動で愛されてるのを確認しちゃって、ちょっとひねくれてるなって思う。


「だから僕に遠慮とかしないでいいからね」
「…うん」
「何、そんなに気にするの?れいたさんにご飯誘われたーって前に喜び勇んで行った淳くんは何処行ったの」
「…ッ、…うん、れいたさん、近くで見たけどホントにイケメンだった」


ちょっと茶化す様に言うと、名前に反応したのか淳くんは肩を震わせて顔を上げ、思い詰めた表情から笑顔になった。
自分を追い込む事が得意な淳くんの、ぎこちない笑顔。


「…ホントに浮気じゃないから。捨てないでね…」


おずおずと僕のズボンの布を掴んで、伺う様に僕の事を見る淳くん。
泣きそうな顔に、いつもの僕を蔑む表情をする淳くんとのギャップに不謹慎にもドキドキした。

僕はMだと思ってたんだけどな。


「…淳くん」
「ん?」
「ちょっとムラムラして来ました」
「…ねぇ、僕そんな話してた?え、僕の話聞いてた?何、鬼龍院さん頭の中まで性器になったの?気持ち悪いの顔だけにしてくんない?」
「淳くんの泣き顔が可愛いから…!」
「サイテー。鬼龍院さんサイテー。もう僕ひろすん誘ってご飯行って来る」
「ちょ、ちょ、ちょ、今日はダメ!待ってねんごろ予定は!?」


瞬時に僕を見る視線を変えた淳くんは、さっきと打って変わって。
それはそれで、イイ、って思いながら淳くんを引き止める。


今度は僕が淳くんの腕を掴んで。


「言い方気持ち悪い。顔も気持ち悪い。僕の話聞いてない所もありえない。僕必死なのに」
「それは、」


って、嫌そうな視線を向けてくる淳くんに言い訳を必死で頭ん中で考えながら。

必死な淳くんが好きだから、なんて言ったら怒るかなぁって思いつつ。
振り解かれる気配の無い淳くんの腕を少し、引き寄せた。




20120628



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