NOT DIET/京流
昨日京さんが俺が買ってた限定のふわふわプリン食ったんだよ。
いや、京さんの分も買ってっから、食べんのはいいよ。
でも、俺の分まで食ってたからちょっと言い合いになって。
『京さん！俺の分まで食べないで下さい』
『うっさいわボケ。食いモンぐらいでガタガタ抜かすな』
『…京さんと一緒に食べたかったのに』
『は、デブっとるお前が食わん様に食ったったんやろ。まぁまぁ美味しかったわ』
『デブじゃないです！』
『デブやん。食いたかったら痩せたら？』
『や、痩せますよ！京さんみたくバキバキに腹筋割りますから！』
『精々、頑張りやー』
『むっかつく！』
『だって無理やろ、お前』
「って、事があったんだけど、れいた簡単に腹筋割れる方法知らね？」
「……お前…そんな意気込みじゃマジで割れねぇぞ」
「だって割るっつってもやり方わかんねぇし」
「地道に腹筋しろよ」
「えー…」
「後、プリンぐらいで京さんと言い合うな。つーか痴話喧嘩聞かされるこっちの身にもなれ」
「違ぇよ真剣だって！れいただってプリン好きだろ」
「好きだけど、お前らの事情はどうでもいー」
「ひでぇ」
次の日、打ち合せの為にスタジオに来て、ウチのバンドん中で一番筋肉付いてるれいたに聞いてみた。
まぁ普段からコイツとが仲良いってのもあるし。
いつもいつも京さんにデブとか言われんだけど。
昔より痩せたし。
やっぱ筋肉付けた方が格好良いし、京さんの身体憧れるし。
でも腹筋か…やんねぇからめんどくせぇ…。
「もういいんじゃねぇの。ルキ太ってってるワケじゃねぇし。京さんからかってるだけだろ」
「…確かにからかってる京さん楽しそうだけど」
「あ、うん。わかった。惚気になりそうだからもう聞かねぇ」
「聞けよ！」
確かに一番、京さんの事言ってんのはれいたが一番多いけど。
煙草を咥えて、火を点ける。
絶対ぇ、腹筋割って京さんをビックリさせてやる。
「あー今日の晩飯何にしよ」
「お前…痩せてぇのか食いてぇのかどっちだよ」
「京さんと食べるご飯優先」
「ソウデスカ」
打ち合せも終わって、スーパーに寄って帰宅。
晩ご飯は麻婆豆腐。
京さんは俺よりは遅くなるらしいけど、晩ご飯食べるっつってたから。
ご飯作り終わって。
京さんが帰ってくんのを待つ。
…早く帰って来ねぇかなー。
あ。
れいたが言ってた腹筋しよ。
京さん帰って来るまで。
リビングのファーのラグが敷かれてる上に寝転ぶ。
…腹筋て、どうやんのがいいんだ？
まぁ…身体起こせばいいんだよな。
そう思いながら、腹筋を始めてみた。
………。
慣れねぇ事するモンじゃねぇ。
腹！
腹が痛ぇよ！！
無理無理無理無理！
数えて20回ぐらいでちょっと休憩。
もう無理。
え、こんなん何回やったら腹筋割れんの。
すげぇしんどい。
もう根を上げて、ふわふわのファーの上で疲れて諦めてたら玄関で鍵が開く音。
京さんが帰って来た。
起きようと腹筋使ったら、さっき腹筋したばっかで痛くてまた寝転ぶ。
ちょ、俺筋肉ねぇー。
ライブやってっから体力はある筈なのに！
「………何しとん自分」
「あ、おかえりなさい、京さん」
ゴロゴロ考えてたら、帰宅した京さんが呆れ気味に俺を見下ろして。
何か買って来たらしくて袋をテーブルに置いてた。
「…で」
「え？」
「何しとん。早よ飯」
「あ、はい！」
転がって手を付いて起き上がり、キッチンへ。
麻婆豆腐が入ったフライパンの蓋を開けIHのスイッチを押した。
あっためるだけ。
「京さん京さん」
「なん」
「俺腹筋やったんですけどー」
「へー」
「アレ難しいっすね」
「何でやねん。普通に出来るやろが」
温めて皿に麻婆豆腐を２人分盛って煙草を吸いながら待つ京さんの目の前に置く。
後、白ご飯と。
「んー。慣れて無いからですかね？でも俺頑張りますよー京さんとお揃いの腹筋！」
「…そんだけ飯食いながら何言うとん」
「ご飯食べて体力つけるんです」
「ふーん、るき頑張るなら折角買うて来たモン無駄になったなぁ…」
「え？」
「僕一人で食べるわ」
「え、え、何を…」
京さんの視線の先。
それを追って京さんがテーブルに置いた袋を見る。
その袋に書かれた名前は。
昨日京さんに食べられた限定ふわふわプリンの…！！
え、京さんが買って来たんですか！！
「食べます！欲しいです！」
「痩せるんやろアホ」
「やです、京さんが買って来てくれたの食べます」
「お前に買って来たんちゃうわ」
「有難う御座居ます大好きです」
「…お前、人の話聞かんの特技やな」
ちょ、マジで！
あの京さんが買って来てくれたとか！
超嬉しいし。
ダイエットしてる場合じゃねぇ。
「やっぱお前には無理やんな」
馬鹿にした様な京さんの笑った顔も、超好きです。
あー京さん大好き。
終
20090225
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