欲しかったのは愛情/京流




京さんの部屋。
ってまぁDVDとか音源とか、大量のディスクばっか並んでる感じなんだけど。
あんま触んない様にしてるけど、掃除機とか、かけたいし。
たまに入ったりする。
別にこの部屋で京さんが何か作業するってワケじゃねぇから、綺麗と言えば綺麗なんだけど。

大体はリビングか寝室だし、でもお互い大量のDVDや音源を置けるこの部屋は、貴重。


丁寧に床に掃除機をかけて、陳列されたDVDや音源を見る。
お互いB型で。
きちんと揃ってねぇと嫌って言う意見は一致して綺麗に並べられてるソレら。

何か、こう言う風にきちんと整理整頓されてんのを眺めると気持ちがいい。
ちょっと京さんのコレクションを手に取る。
また何か見せて貰おう。

自分の背丈よりもかなり高い、ラックを見上げる。
一番上は踏み台がねぇと届かねぇ。
天井まであるから。
そんなに、いつもはスルーする景色の一部。

…に、違和感。
何、アレ。

一番上の、DVDが並べられたその上に何かある。
封筒みたいな。
今まで気付かなかった。

何となく、胸元がざわついた気がしてソレが気になって。
取る為に踏み台を探す。

椅子でいっか。

適当な椅子を引っ張り、その上に上がって目に付いた封筒を手に取る。

…やっぱり。

見覚えがある封筒。
中身は、金。
多分100万はあるだろうな。
ってか、この封筒いくつあんの。

俺が、貢いでた時に京さんに渡してたヤツ。
何でこんな所に。
まだ2つ3つある封筒。
全部でいくらになんの。
使って無かったのかよ。

甦る記憶。

手に取るその全ての封筒は、ズッシリと重い。
簡単に、必死で手に入れた金が今こうしてあんのは不思議な気分。



「…何しとん、自分」
「ッ、きょ…!」


ビクッと、反応して封筒を床に落としてしまった。
帰って来たのも気付かなかった。
椅子に上がったまま振り向くと、怪訝そうな顔した京さんの視線が、床に落ちた札束入りの封筒を捕らえた。

ソレが何かは理解したとは思うけど別に顔色一つ変えない、京さん。


「…あ、お帰りなさい」
「飯は」
「出来てます。…あのッ」
「なん」
「これ…」
「それがどしたん」


椅子から降りて、落ちた封筒も拾い上げて京さんと封筒を交互に見る。

どうした、って。
何でまだ、こんな、何年も前に貢いでた金があるんですか。
あげた金だから、京さんがどう使おうが勝手だけど。
そう思ったら、自分は何が聞きたいのかわからなくなった。


「…使いたかったら、使えば」
「え?」
「僕別にいらんし。そこに置いとったん、忘れとったわ」
「使わ、なかったんですか…?」
「そうでも無いけど。別に金が欲しかったワケちゃうから、どうでもえぇ」
「なら…」


何で?
そう思ったけど、貢ぎになりたいって言ったのは自分だった。
それに、付き合ってたって事?
わかんねぇ。


「別に。何でもえぇやん。何か欲しいモンあったら買ったら?」
「いえ、これは京さんに渡したヤツなんで」
「…金は金やろ。あるモン使えばえぇやん」
「…あの時、金いらなかったですか…?」
「せやな。女から巻き上げた金やろ。使ったけど、楽しいも何も無い」
「………」


何か、過去は京さんの事を考えながら京さんの気持ちを考えず、がむしゃらに金渡してたけど…今本音聞くと…何か…こう。
ショックかも。


「やから、るき使えば?」
「別に、欲しいモン無いです…」
「ふーん。なら飯にして」
「あ、はい」


いきなりこんな大金、使えって無理あんだろ。
出所が出所だし。
ぐるぐる考えながら、取り敢えず京さんの飯を用意する為にその部屋を出た。


あ、でも。


「京さん」
「なん」
「この金、2人で使いませんか」
「…何でなん」
「2人で使ったら、楽しいですよ、きっと」
「何に使うん」
「2人で、旅行、行きたいです」
「……」
「2人のオフが重なった日。一泊でもいいんで」
「……海外以外だったら別にえぇで」
「マジですか!」
「つーか京都がえぇ。温泉とか」
「はい、楽しみです!」


京さんと旅行とか!
何だそれ楽しみ過ぎる!
過去、この金にはいい思い出とか無かったけど、今こうやって役に立ってんだから無駄じゃ無かった。


「るき、早よ飯」
「あ、すぐ用意します!」


まぁ正直、あんだけの金は京都旅行では使い切れねぇだろうけど。
楽しみ過ぎる!




20090127


[ 43/500 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -