俺が あのとてつもなく非ィ科学的な夢を見たのは3ヶ月ほど前の事だ。
俺の誤解で起こしてくれた凡骨を殴ってしまった上にモクバにまで心配をかけてしまった…
それから俺は もう二度とあのような悪夢を見ることは無いだろうと思っていた。
思っていた…のに…!
*林檎のかわりに*
今は深夜2時。
ようやく今日…いや正確に言えば昨日の分の仕事が終わったところだ。
パソコンを閉じたのと同時に眠気が襲ってきたので俺はコートだけ脱ぐと すぐベッドに横になった。
ふいに目が覚めると部屋がおかしくなっていた。
壊れたとかそういう変化ではなく立派になっていたのだ。
天井にはシャンデリアがあり、テーブルや棚も見事な装飾がなされていて窓の所のカーテンも細かい刺繍が施されている。
「これは…城か?」
どうやら最悪の事態が起こってしまったらしい。
その証拠に あるはずのない女物のドレスがクローゼットを占拠していた。
「チッ…今度は一体何の話だ」
ドレスを着ていて幸せを約束された女が出てくる話など腐るほどある。
何なのかを考えているとドアをノックした後で召使が部屋に入ってきた。
「姫様 女王様がお呼びでごさいます」
「(姫様、か…)ああ 分かった」
「それでは お着替えになってからまたお呼びつけ下さいませ」
召使が部屋から出ていった後 俺はマシなドレスを選び着るまでに一時間を要した。
「おい 終わったぞ」
結局 俺が選んだのは白薔薇の飾りが付いた裾が長い水色のドレスだった。
「では広間まで案内いたします」
さすが城だけのことはあって広間までの道のりは長かった。
(だが 女王様というのは一体誰だ?)
大概このような話では女王というのは主人公の母親だ。
しかし早くに母親と死に別れた俺は母親の顔はおぼろ気にしか覚えていない…
広間の前まで案内された俺は“女王様"が誰だか想像もつかないまま広間の扉を開けた。
「貴様は……!!」
そう そこにいたのは
紛れもなく、剛三郎だった。
(終)